日本クレイが新型スーパーコンM90シリーズ

大容量種記憶搭載でGAUSSIANなど高速化

 1992.5.14−日本クレイは、世界最大の超大容量主記憶をもつスーパーコンピューターの新シリーズ「Y-MP/M90シリーズ」(商品名)を発売すると発表した。現行機種の最大記憶容量2ギガバイトを大幅に上回る32ギガバイトの主記憶を実装することができ、これまでメモリー不足で実行できなかった超大規模のシミュレーション演算が可能になる。価格はプロセッサーが2台のM92シリーズが4億3,000万円から、4台のM94シリーズが8億5,000万円から、8台のM98シリーズは15億2,500万円から。9月から順次出荷を開始する。

 新製品の「M90シリーズ」は、現行のY-MP2E/4E/8Eなどと同等のプロセッサーを装備。プロセッサーを1台から8台まで拡張でき、演算性能としてはこれらEモデルと同じ0.5ギガ−4ギガFLOPSの性能レンジをもっている。

 Eモデルとの相違点は主記憶装置。Eモデルはアクセスタイム15ナノ秒の1メガビットSRAMを使用しているが、今回のM90では60ナノ秒の16メガビットDRAMを採用、システムとしてのコストアップを抑えながら大容量主記憶の実装を実現した。まったく新しい主記憶機構を採用したため、EモデルからM90へのアップグレードはできない。

 大容量主記憶のメリットは、とくに大規模なシミュレーション演算であらわれる。例えば新車の設計の場合、これまでは車体の各部分を別々にモデリングし、最後に各データを合わせて計算するというアプローチがとられていたが、M90では車体全体を一度に扱えるだけの記憶容量をもつ。大容量メモリーをフル活用したアプリケーションの新しい高速処理アルゴリズムの研究・開発にも道を開いたことになる。

 すでに、構造解析ソフトのMSC/NASTRANや、量子化学計算ソフトのGAUSSIANなどで最適化が図られつつあり、ベンチマークでは実際にNASTRANで3−10倍、GAUSSIANでも3−8倍の高速化が達成できたという。

 同社によると、ジョブが中規模で多くのユーザーが使用する場合にはEモデルが最適。一方、大規模主記憶を必要とするアプリケーションを動かすユーザーには、対話型処理やバッチ処理などにも柔軟に対応できるM90が適しているとしている。