菱化システム:吉田和夫社長インタビュー

CCS事業で特色打ち出す

 1992.08.05−菱化システムは、米国バイオシムテクノロジーズ社の国内総代理店としてCCS(コンピューターケミストリーシステム)事業を推進、ポリマー設計、触媒設計、電子・光学・磁気材料設計など最先端の分子設計支援技術を次々に切り開くバイオシムの戦略に呼応して国内でもユニークな事業活動を繰り広げてきた。同社は三菱化成100%出資の情報子会社だが、今回、三菱化成で総合研究所長を務めた吉田和夫常務が新社長に就任した。「CCSについては三菱化成社内で長年にわたり経験を積んできた。その研究ネットワークをフルに生かせる分野であり、これで菱化システムとしての特色を出していきたい」と述べる吉田社長に今後の事業戦略を聞いた。

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 吉田社長は、「化学産業は一般にコンピューター化が遅れている。もちろん、プラントでの生産のためにはコンピューターを駆使しているが、もっと研究面で情報システムを駆使するべきだ」と訴える。三菱化成の研究開発を率いてきた立場からの本音の言葉である。「そのために昨年、総合研究所内に計算科学研究所を新設し、最新鋭のシステムを導入した」という。その吉田新社長を迎え、同社のCCS事業戦略がどう強化されるのか、まさに注目されるところ。

 同社がバイオシム製品の取り扱いを始めたのは1987年9月から。当時総代理店だった三菱商事と販売提携する形でスタートした。1991年4月、改めて同社が総代理店(三菱商事は代理店としてサポート)になり、事業体制を強化。次いで今年の7月からは、新しい販売代理店として物産アドバンストシステム(宮崎重則社長)を起用した。

 「CCSなど科学系のソフトウエアは、どう活用するかというアプリケーションの知識がポイントになる。その意味で三菱化成は長年のノウハウをもっており、菱化システムとしては良質のユーザーを抱えているようなものだ。このノウハウは、バイオシムにとっても大きなメリットになっていよう。しかし、正直いって、われわれはソフトを売りまくるというノウハウには欠けている。販売力の面で、物産アドバンストシステムにカバーしてもらおうという考え方だ」と説明する。

 バイオシム製品は、分子動力学法プログラム「DISCOVER」、全システムの統一的なユーザーインターフェースとなる「INSIGHT II」を中心に多彩な製品群をもつ。当初はバイオテクノロジー、医薬品開発がメインのアプリケーションだったが、バイオシムは研究コンソーシアムを主催する形で合成ポリマー、触媒、電子・光学・磁気材料など先端領域を精力的に切り開いてきている。バイオシム製品は世界の2,700サイトで利用されており、CCSベンダーとしてトップクラスの実績を築いている。

 さて、国内のソフト業界は現在、産業創設以来初めてともいわれるリセッションに苦しんでいる。「三菱化成からの仕事は比較的安定しているが、今年はかなりたいへんだ。その中で、CCSなどで特色を出して何とか伸ばしていきたい」と吉田社長。

 現在、バイオシム事業は、全社売り上げ120億円の約5%を占めており、まだまだ小さいが、2−3年後にはこれを10%以上に高める計画。「そのために、バイオシムとの技術提携、共同開発の可能性も含め、また国内で開発されたユニークなソフトの発掘・商用化など、いろいろ構想を練っている」としており、今後の吉田社長の手腕が期待される。