富士通と呉羽化学がANCHORのUNIX版を開発

研究現場の化学者が直接操作可能、計算化学の技術進歩を反映

 1992.10.16−富士通と呉羽化学工業は15日、コンピューターに不慣れな一般の化学者や実験化学者が直接利用できるように操作性を高めた新しい分子設計支援システム「ANCHOR II」(商品名)を共同開発し、販売・出荷を開始したと発表した。両社は1984年からCCS(コンピューターケミストリーシステム)の共同開発を進めており、1986年には初代の「ANCHOR」を製品化している。今回の新システムは、この6年間の計算化学領域の技術進歩を取り込むとともに、オープンシステム、UNIXへの本格対応を図った。富士通のワークステーションSファミリーをはじめとするSPARCマシン上で利用でき、ソフトウエア価格は800万円。今後3年間で200システムの販売を見込んでいる。

 「ANCHOR II」は、研究現場の合成化学者や実験化学者自身がシステムを駆使することを想定して開発された。実際に、分子模型を操作したり、分子構造を紙に描いたりする感覚で利用できるなど、化学者がもつコンピューターへの違和感を取り除くようにきめ細かい配慮がされている。

 機能面では、立体配座解析や分子形状解析などの機能を大幅に強化。また、ユニークな一括表示機能をもっており、化学計算の結果や実験データ、文献情報などを一括して表示することができる。マルチウインドーにより、最大12分子についての情報を一覧的にみることが可能で、研究者の発想を強力に支援する。

 計算化学プログラムとしては、MOPACやMM2、MM3のほか、呉羽化学が社内で開発・利用中の“EM5”を提供する。これはAMBERによく似たポテンシャルエネルギー関数を使用する分子動力学法プログラムで、1990年末に独自に作成された。ヘテロ原子を含むほとんどすべての有機化合物の構造解析・最適化などが可能という。ユーザー自身でも新しいパラメーター開発が行えるようにサポートしていく考え。

 また「ANCHOR II」は、構造活性相関解析システム「ADAPT」(米MDL社製)や化学データハンドリングシステム「KAMELO」など富士通の他のCCS製品群との連携処理も可能。