米MSIが基盤技術のケミストリーバックプレーンをオープン化

CCS開発実行環境のデファクトスタンダード狙う、自社製品も順次移行

 1992.11.17−米国の大手CCS(コンピューターケミストリーシステム)ベンダー、モレキュラーシミュレーションズ社(略称・MSI、マイケル・J・サヴェッジ社長)は、CCS分野の標準フレームワークとなる可能性を秘めた“ケミストリーバックプレーン”をオープン化する。これはオブジェクト指向技術を用いて開発されたフレームワークソフトで、同社の多数のCCS製品群を協調動作させる統一基盤であるとともに、オブジェクト指向型の開発環境でもある。同社では、外部のソフトウエア開発者に“ケミストリーバックプレーン”の情報を公開。このフレームワーク上で動作するCCSソフトを幅広く開発・移植してもらう作戦だ。来年第1四半期から開発環境を提供していく。すでに、大手のCCSベンダーとライセンス供与で交渉中とも伝えられており、今後が注目されるところ。

 この計画は、MSIのサヴェッジ社長が来日して明らかにしたもの。いまのところ、他のソフトウエア分野でみられるような、マルチベンダーの共通フレームワーク化の動きには至っていない。しかし、フレームワーク確立はユーザーに与えるベネフィットが非常に大きく、各方面での関心が高まっていることから、今後CCS市場でのフレームワーク確立を促す起爆剤になる可能性がある。

 同社は、最終的に米英の大手CCSベンダー3社が合併してできた企業で、「57種もの製品群をもち、それぞれがデータ構造もユーザーインターフェースも違っている」(サヴェッジ社長)ため、社内的にも統一的なフレームワークをつくる必要性が大きかった。

 同社の計画では、1995年までに現在のシステム群をすべてモジュール化し、順次ケミストリーバックプレーン上へ移行させていく。オブジェクト指向の開発環境が提供されるので、システムの開発・移植が容易になると同時に、ユーザーは多種類のシステムを統一された体系で有機的に利用できるようになる。

 現行のMSI製品の移植のほか、今後開発する新規システムも次々にケミストリーバックプレーンにのせる計画だが、外部で開発されたシステムも積極的に取り込んでいくことにした。大学などへケミストリーバックプレーンを公開、研究者にソフト開発のプラットホームとしても使用してもらい、“事実上の標準”としての普及を図る。また、他のCCSベンダーへのライセンス供与についても検討しており、フレームワーク化で先行している利を生かしていく。