1998年春CCS特集

国家プロジェクト「高分子材料設計プラットホーム」4月からスタート

化学品検査協会・平石次郎理事長インタビュー

 1998.03.20−通産省の先導研究「計算機材料設計」の企画委員会委員長としてこの1年強の期間活動してきたわけですが、企業や大学の方を交えての熱心な論議の結果を今回の大学連携産技制度のプロジェクトとして成立させることができ、非常にうれしく思っています。

 今回は調査研究でしたから、CCS技術の幅広い領域を網羅して議論していきました。その中で明らかになってきたことは、原子・分子を扱うミクロスコピックな世界では多原子系や巨大分子などよりマクロな分野へと関心が向いており、反対に有限要素法などの工学的なマクロスコピックな世界からはもっとミクロな物性を考慮したいというニーズが強いということでした。つまり、ミクロとマクロに挟まれた“メソスコピック”な領域に非常にチャレンジングな世界があるということです。それで、メソ領域のシミュレーションエンジンをどうするかが論議の中心となり、その中から“シームレスズーミング”という発想が生まれてきたと思います。

 メソ領域を扱うためには、新しいモデル化、新しい計算手法といったこれまでのCCSと異なる新しい観点が必要でしょう。これから始まる大学連携プロジェクトはCCSの初めての国家的取り組みです。所期の目的を果たされ、魅力的なソフトウエアを産み出されることを期待します。

 また、CCS分野全体の有機的連携を確保し、独創的なソフトを世に出していくために、産学官の枠組みを越え、真に使えるソフトの開発・普及を目指した何らかの組織体が必要だと考えます。一つの到達点として、そうしたセンター構想を意識した活動も重要といえるでしょう。

 この1年を振り返りますと、先導研究での有意義な論議の場や、せっかくの研究者同士のつながりをこのまま失ってしまうのは損失です。何かサロン的な集まりとして継続を図っていけたらと考えています。一応、“RIRACC”(ライラック)という名称だけは考えてあるんですが・・・。