米MAG、ウィリアムズCEOインタビュー

バイオインフォマティックスで新薬開発を支援

 1998.06.26−最近、新薬の研究開発において遺伝情報やデータベース(DB)を中心としたバイオインフォマティックス技術を利用する事例が増えている。ヒトゲノム情報をもとに受容体側のたん白質構造を推定してそれに働く薬品分子の設計を目指す“ストラクチャーバイオロジー”、遺伝情報を病気の治療や診断に使おうとする“ファーマコジェネティックス”といった技術領域が目覚ましい発展をみせているためだ。米モレキュラーアプリケーショングループ(MAG)はこの分野にフォーカスしているソフトベンダーで、このほど新製品の「ジーンマイン」と「ディスカバリーベース」を日本市場に紹介しはじめた。昨年5月にグラクソウェルカム(R&D情報資源担当副社長)からMAGの社長兼最高経営責任者(CEO)に就任したマイラ・ニコル・ウィリアムズ博士に戦略を聞いた。

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 − MAG社の概要は?

 MAGは1993年に設立されたベンダーで、遺伝子情報を新薬開発に応用するための技術およびサービスの提供をターゲットにしています。バイオインフォマティックス分野にフォーカスしており、関連するソフトやツールを開発するとともに、創薬にバイオインフォマティックスを利用するための新しい方法論なども研究しています。

 − いま、バイオインフォマティックスが注目されているのはなぜですか?

 ヒトゲノムの解析が進むなかで、新薬開発のアプローチが変わってきているからです。バイオインフォマティックスによる大量のデータ解析を通じて、例えば医薬品のターゲットになり得る酵素をリストアップできます。アミノ酸の配列データから受容体側のたん白質の立体構造を推定し、それに効果的に働く薬品分子を設計することが可能です。実際の医薬品開発では、さらに高い薬効を求めるとともに、安全性の観点から分子構造をさまざまに最適化する必要がありますが、バイオインフォマティックスから得られる情報はそれらをスピードアップすることにも寄与します。

 この分野では当社の「ジーンマイン」が役に立ちます。塩基配列の解析からたん白質の高次構造予測までトータルな機能を持ちますが、大量のデータの中から意味のある情報をとくに医薬品開発に適用できる形で発掘するという思想でつくられています。

 − 医療の面でも応用が進んでいるようですね。

 例えば、我々の顧客に“ジーンチップ”と呼ばれる技術を持つアフィメトリックス社があります。シリコンチップの上にDNAプローブを置き、特定の病気へのかかりやすさを遺伝子的に診断するものです。当然、遺伝子情報を取り出して解析するためにバイオインフォマティックス関連のソフトウエア技術が必要になるわけです。

 − 新しく製品化した「ディスカバリーベース」の特徴は?

 創薬研究用の総合DBシステムをイントラネット環境で構築することができます。バイオインフォマティックスでは、インターネットを利用してGenBankなどのパブリックなDBにアクセスすることが欠かせませんが、研究中の配列データをネット上に流すのは危険ですので、ファイヤーウォールの内側にすべてのDBを持ってきてしまおうという考え方です。イントラネットですからウェブブラウザーを介して検索や解析が行えますので、トレーニングなしで誰にでもすぐに使えます。

 − 日本市場について。

 日本では、菱化システムとのパートナーシップで展開していきます。我々のソリューションを通して日本の製薬産業の発展に寄与したいと考えています。