サイエンス系ソフトのノウハウ結集、世界をにらんだ展開目指す

富士通:小倉誠計算科学技術センター長インタビュー

 1999.05.27−富士通は、科学技術系のソフトウエア事業の拡充を図るため、設計解析やシミュレーションなどを手がけていた関連部門を一元化し、「計算科学技術センター」を設立した。“科学”に強いシステムエンジニア(SE)140名を結集させ、二ケタ成長で売り上げを伸ばしていく考えだ。「得意領域に集中することで新しい市場を開発し、世界に打ち勝てるソフトを生み出していきたい」と述べる小倉誠センター長にこれからの戦略を聞いた。

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 新しい計算科学技術センターは、システム本部の科学システム統括部からの2部門に加え、HPCシステム統括部(システム本部)と計算科学研究センター(パッケージ事業本部)を移行させて統合した組織。研究開発からパッケージ開発、マーケティング、ユーザーサポートまで一貫した体制を持つ。科学技術の広い分野を網羅しているが、研究段階のものを含めて市場自体が発展途上にあるソフトも多く抱えており、小倉センター長は「新しい市場、新しいビジネスを開いていくという精神で展開したい」と話す。

 同センターは、民間研究所向けのソリューション製品の企画・開発、システム構築、運用支援を中心にする「R&Dソリューション部」、化学・バイオ関連の研究支援を中心とする「コンピューターケミストリーシステム(CCS)部」、構造解析や流体解析などCAE(コンピューター支援による開発)システムを提供する「CAE技術部」、人工知能(AI)応用などの新規なアプリケーションを探る「知的システム研究部」、スーパーコンピューター関連の専門技術支援とパッケージ移植などを行う「HPCシステム部」−の5部門から構成される。

 「一見すると、寄せ集まりのようだが、“科学”という根っこで共感しているメンバーなので、方向性が決まれば思わぬ一体感を発揮すると期待している」と小倉センター長。「コンセントレーション、イノベーション、グローバリゼーションを基本方針とし、富士通が得意な技術に集中して海外市場でも活躍できる革新的なソフトを育て上げていきたい」と強調する。

 「例えば、ノートパソコンの電磁場解析を行うACCUFIELDというシステムは、社内で実際に使うためにつくったものだが、外国製品よりも高性能なため、パソコンメーカーなど20社に売れた。これは成功例だが、性能が良くてもマーケティングがともなわずに日の目をみていないソフトが他にもあるはず。また、日本にはユニークな理論をお持ちの大学の先生も多いわけで、そうした技術やソフトを掘り起こすのも当センターの使命だ」。

 CCS関連では、世界市場をにらんだ展開もはじまっている。「分子軌道法ソフトMOPAC2000は、この春の米国化学会で初お披露目したが、かなり注目度が高かった」。中心となるアルゴリズムは米国の研究者が開発したものだが、プログラムはれっきとした富士通製だ。「学会のセミナールームがあふれかえるほどの盛況で、ようやく海外ビジネスの手応えが実感できてきた」と上機嫌で話す。