CCS特集:国家プロジェクト動向

科技庁プロジェクト=物質・材料設計のための仮想実験技術

 1999.11.20−科学技術庁プロジェクトの「物質・材料設計のための仮想実験技術に関する研究」は、約10億円の予算で95年度から東京大学、金属材料技術研究所(科技庁)、富士総合研究所など産官学の14機関が参加して実施されており、今年が最終年度となっている。データベース技術と計算化学プログラムを統合したシステム「仮想実験ワークベンチ」もできあがりつつあり、プロジェクトメンバーはすでに利用可能。プロジェクト終了後はフリーで公開される予定となっている。

 同プロジェクトは、“計算”を“実験”と同じ地位に押し上げることが一種の目標であり、実験に代わり得るシミュレーション技術を“仮想実験装置”と位置づけている。具体的には、第一期の3年間で物質・材料設計のための要素技術・統合化技術に関する研究を行うとともに、仮想実験装置の実現に向けた共通基盤の研究を推進。第二期は、設計目標を電子機能と構造機能に設定して具体的なテーマを追求しながらシステムの構築を進めてきた。

 設計対象は、金属・半導体材料、電子機能材料、磁性機能材料、さらには超耐熱材料としてのスーパーアロイなどであり、分子軌道法などの第一原理計算の適用や知識ベースの蓄積などが行われた。

 開発された仮想実験システムは、ウェブ環境をベースにしており、Javaアプレットを用いてユーザーインターフェースを実装。このため、クライアントは簡便なインターネットブラウザーが利用できる。

 とくに、タスクフローに基づく設計支援機能が特徴で、設計対象の物質・材料、設計シナリオを選択すると、そのシナリオに対するタスクフローが表示される。各タスクに材料設計の手順を設定しておき、必要な解析ソフトを登録しておいて実行させたり、データベースを参照したりすることができる。この場合、材料設計の成功事例などの知識やノウハウがタスクフローとして共有できるようになることが興味深い。

 計算エンジンは、第一原理分子動力学、分子軌道法、分子動力学、モンテカルロ法、クラスター変分法、密度汎関数法など、一通りのものが揃っている。