ナノシミュレーションが液晶物性をMDで予測

応答性に関係する回転粘度の計算に成功

 2000.03.03−独立系コンピューターケミストリーシステム(CCS)ベンダーのナノシミュレーション(本社・千葉市、桑島聖代表)は、分子動力学法(MD)を使って、液晶デバイスの応答速度に関係する重要な材料物性である“回転粘度”をシミュレーションで求めることに世界で初めて成功した。液晶材料の大手メーカーである独メルク社との共同研究で実現したもの。将来の壁掛けテレビなどの実用化のためには、ますます応答速度の速い液晶が求められており、MD計算で重要物性が予測できるようになれば、次世代の材料開発に大きく寄与すると期待される。

 同社は、MD計算を専門とする特異なソフト会社で、独自のノウハウによるMDソフト「NanoBox」を開発。MDは分子集合体を計算できる理論で、同社ではとくにプラスチックや液晶などの高分子に対する計算に特化している。

 液晶は、液体が持つ流動性と結晶が持つ光学異方性を兼ね備えた高分子であり、電界に対して容易に分子の配列が変化する性質を利用して光の透過率をコントロールし、画面上に絵や文字を表示するもの。今回、計算に成功した回転粘度は、電圧をかけたときに液晶の分子が回転する際の抵抗の大きさを示す物性。これが小さいほど応答速度の速い分子だということになる。これまで、関係のありそうな物性を求めて、その関連性から回転粘度を予測した研究はあったが、MD計算でダイレクトに回転粘度を求めた例は世界にもなかったという。

 すでに、分子構造の中にフッ素が入ると回転粘度が下がるという現象が実験で知られており、そのことも計算で確かめた。実際には、構造中にフッ素を挿入する位置によっても粘度は変化するため、好ましい性質を持つ液晶高分子を実験でみつけ出すのは、その組み合わせの膨大さからも困難であり、MD計算で予測できるメリットは大きい。

 同社では今後、デバイスの特性を左右する基礎物性の一つであるフランク弾性定数(液晶分子がねじれる際の弾性エネルギー)や、液晶の安定性に関係する相転移温度などをシミュレーションできるようプログラム開発を進め、実用的な液晶材料設計支援システムに発展させていく。