MSI日本法人がファーマコピアの事業を日本で開始

リード化合物探索サービスを提供

 2000.04.18−米国の大手コンピューターケミストリーシステム(CCS)ベンダーであるモレキュラーシミュレーションズ(MSI)の日本法人は、国内の製薬会社向けにリード化合物の探索サービスを開始する。個別の委託研究契約を結んで、コンビナトリアルケミストリー/ハイスループットスクリーニング(HTS)技術などを利用して、数ヵ月から半年ほどの短期間で新薬の有望な候補化合物を提供するというサービス。MSIの親会社である米ファーマコピアの事業として正式に国内向けに開始するもので、過去には日本企業では第一製薬および大塚製薬工場からプロジェクトを受注した実績がある。

 ファーマコピアは1993年設立。もともとコンビケム技術のリーディング企業だが、98年2月にMSI、今年2月にシノプシスと、CCSベンダーを相次ぎ買収し、創薬支援の技術領域を広げてきている。旧MSIは92年に帝人と合弁で日本に進出していたが、ファーマコピアの戦略に従って99年3月にその合弁を解消、日本法人をファーマコピア100%出資にしていたという経緯がある。

 現在、ファーマコピア自体は本社機能に集中し、旧ファーマコピアのリードディスカバリーサービス(LDS)事業を中心とした「ファーマコピア・ラボラトリー部門」、旧MSIのソフトウエア事業を行う「ライフサイエンス・モデリング&シミュレーション部門」と「マテリアルサイエンス部門」、旧シノプシス製品を中心にした「ケムインフォマティクス部門」−の4事業部が実動部隊となっている。

 MSI日本法人は、旧MSIおよび旧シノプシスのソフトウエア事業を総代理店として菱化システムに一任しており、今回は残るファーマコピア・ラボラトリー部門のLDS事業を直接手がけることにしたもの。

 リード化合物探索のアウトソーシングを提供するコンビケムベンチャーは他にも多いが、ファーマコピアは600万を超える世界最大規模のコンビナトリアル化合物ライブラリーを持ち、1536ウェルのマイクロプレートとアッセイロボットを利用したウルトラHTS技術に加えて、MSI/シノプシスのソフトウエア技術をも兼ね備えているのが強み。リード化合物は新薬の分子設計の際に基本骨格となる化合物で、この分子構造にさまざまな修飾を加えて薬理活性を高めるなどして候補化合物を絞り込んでいく。このリード化合物をみつけ出して提供するまでがLDS事業の範囲となる。

 とくに、同社の化合物ライブラリーはただ数が多いだけでなく、品質が高いのが特徴。例えば、リード探索における一般的なヒット率がせいぜい15%程度なのに対し、同社のライブラリーは43−64%の高率を記録しているという。実際、600万化合物のうち、300万はこれまでの顧客とのプロジェクトにすでに割り当てられてしまっている。これから受注するプロジェクトは残りの300万化合物の中からリード化合物を探すことになる。しかし逆に言えば、これは同社のライブラリーの質の高さを示す指標であり、ライブラリー自体も年間100万化合物のペースで増大している。ユーザーによってターゲットも違うので、300万が残り物というわけではない。

 また、リード発見までの期間が数ヵ月から最長で6ヵ月と短く、一化合物当たりのスクリーニング単価はわずか数10セント程度と、コスト・時間的側面においても、研究のアウトソーシング先として優れているとしている。

 LDS事業のスタッフは、メルクやスミスクライン・ビーチャム出身の経験豊富な研究者によって構成されており、海外での実績ではバイエル、バーテックス、NVオルガノン、ファルマシア&アップジョン、ロッシュ、シェーリング・プラウなどがある。