米シュレーディンガーが新薬開発用スイート製品群

たん白質と低分子の相互作用を解析、2000年末に発売へ

 2000.08.24−計算化学を中心とした米国のコンピューターケミストリーシステム(CCS)ベンダーであるシュレーディンガー社は、年末をめどに新薬開発のためのスイート製品群を製品化する計画を明らかにした。たん白質(受容体)と低分子(薬物分子)の相互作用を解析するための一連のソフトウエアがセットになっている。ここ数年、CCSのアプリケーションは医薬偏重の傾向が続いており、シュレーディンガーとしても新薬開発を明確にターゲットにした製品の必要性を感じていたと考えられる。

 今回の開発プロジェクトは、ルトガース大学(ニュージャージー州)のロン・リービー教授らのグループが中心になっている。リービー教授はシュレーディンガーのサイエンティフィックアドバイザリーボードの一員。

 システムはストラクチャーベースの薬物設計ツールで、「Impact」「Glide」「Liaison」「QSite」「Maestro」の5つのサブシステムから構成されるスイート製品の形をとる。

 Impactはコアモジュールで、古典力学および量子力学理論に基づく計算化学機能を提供する。シュレーディンガーはシュードスペクトラム法を用いた高速の非経験的分子軌道法ソフト「Jaguar」、コンホメーションサーチや溶媒効果の計算などを得意とする分子力場法/分子動力学法ソフト「MacroModel」を擁しており、これらの計算エンジンをImpactに組み込むことになる。

 また、Glideは薬物分子のドッキングスタディーを支援するツールで、新しいアルゴリズムが利用されるようだ。Liaisonは化学結合の自由エネルギー計算モジュール。QSiteは、量子力学と分子力学のハイブリッド型計算手法を実現するもので、比較的大きな系を高精度で計算するのに役立つ。

 最後のMaestroは、シュレーディンガーの新しい統一GUI(グラフィックユーザーインターフェース)環境。現在はJaguarとMacroModelで使われているが、今回のスイート製品でもこれが採用される。

 システムの詳細はまだわからない部分が多いが、年末にかけて徐々に内容が明らかになるとみられる。