TSTが米ネオケムのケムインフォシステムを発売

分析装置データを統合管理、コンビケム/HTSを高度化

 2000.08.16−帝人システムテクノロジー(TST)は、米グロトン・ネオケム社(本社・マサチューセッツ州、ジョージ.E.バリンジャー社長)と販売代理店契約を締結し、ケムインフォマティクス分野のシステムインテグレーション(SI)事業に本格的に進出した。ネオケムのデータベース(DB)管理システム「NeoLink/cc」は、NMR(核磁気共鳴)やMS(質量分析)、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)などの分析装置のデータをDB化し、それらと化合物情報との統合管理を実現するシステム。コンビナトリアルケミストリー/ハイスループットスクリーニング(HTS)技術を利用した創薬システム環境を改善することができる。TSTでは、ユーザーの要望に合わせ、カスタマイズやインテグレーションを行って納入する。ソフトウエアの価格は標準的なカスタマイズ込みで1,000万−3,000万円。

 ネオケム社は1997年に設立された企業で、NeoLink/ccが最初の製品になる。創設者の幾人かがマキシマ(Macsyma)社の出身で、その洗練されたノートブックライクなユーザーインターフェース技術を買収して取り入れている。これまでに、アベンティスやデュポンなど製薬会社を中心に7社の導入実績がある。

 NeoLink/ccは、DBエンジンにオラクルを利用しており、業界標準のインターフェースを採用しているため、他のシステムとの統合や他のDBとのリンクが容易に実現できる。 NeoLink/cc自体は、いろいろなメーカーのNMRやMS、HPLCなどの分析装置からのデータを取り込んで一元的にDB化する機能を持っているが、例えば米MDLインフォメーションシステムズの化学情報管理システム「ISIS」と連携させることで、構造式や物性情報、文献情報などに加えて、実際の分析データをDBに統合して扱うことが可能。

 とくに、コンビナトリアルケミストリー/ハイスループットスクリーニング(HTS)研究に最適で、1つの画面にアッセイ結果のマイクロプレートイメージや、ヒットしたサンプルのNMRデータ、MSデータ、構造式など、さまざまな情報を同時に表示させることができる。これまで、研究者が分析データを自分のパソコン上に簡単に呼び出したり、それらのデータを化合物DBとリンクさせて表示したりすることは難しかったので、研究者にとって非常に便利なツールになるという。

 エンドユーザーからは、ウェブブラウザーまたは独自のノートブック形式のクライアント、さらにISISなどの外部クライアントが利用可能。ウェブ対応機能は、マイクロソフトのウェブサーバーを利用した一種のASP(アプリケーションサービスプロバイダー)で、JavaスクリプトまたはVBスクリプトを使って、NeoLink/ccのすべての機能をブラウザーから引き出すことができる。

 また、マイクロソフトのCOM/DCOMといったオブジェクトコンポーネント技術をサポートしており、これを利用してさまざまなウィンドウズアプリケーションにNeoLink/ccの機能を組み込むことが可能。ISISのウィンドウズ版クライアントの中にNeoLink/ccのボタンを設けたり、エクセルのメニューからNeoLink/ccを呼び出したりすることも容易に行える。

 TSTでは、NMRなどの分析データのDB管理システムとして「SpecInfo」を提供しているが、ISISなどと連携する機能はなかった。国内の製薬会社はISISを核にしたコンビケム/HTSシステムをすでに構築しているところが多く、そのインフラを生かしつつ、創薬支援システム環境をグレードアップできるため、国内でも注目が集まるとみられる。