富士ゼロックスがMD専用エンジンを開発

最新空間分割アルゴリズムをサポート

 2000.07.05−富士ゼロックスは、分子動力学法(MD)によるシミュレーション演算を高速化するための専用アクセラレーターボード「MDエンジンU」(商品名)を開発し、販売を開始した。VMEバス対応のボード製品で、VME規格のシャーシに格納し、サン・マイクロシステムズのワークステーションまたはIBM-PC/AT互換パソコンに接続するか、VME規格のCPUボードをフロントエンドにして使用する。最大76ギガFLOPS(1ギガFLOPSは毎秒10億回の浮動小数点演算を実行)の計算能力を発揮することができ、価格は158万円。

 今回の製品は、1996年5月にテスト的に製品化した「MDエンジン」の後継機で、もともと1992年度から通産省の「新規産業創造技術開発費補助金(次世代情報技術開発費補助金)」を受けて、大正製薬などの研究グループの協力・ノウハウ提供を得て開発されてきた。前モデルは大学や企業の研究部門を中心に年間60セット程度の販売実績があったという。既存ユーザーの要望により、今回モデルチェンジを実現させた。

 MDエンジンUは、クーロン力やファンデルワールス力などの非結合相互作用計算を10倍に高速化した新設計のMODELUプロセッサーと、計算精度を高めながら高速化を図る空間分割アルゴリズムを実現する新開発のTAKOプロセッサーを搭載している。空間分割による高速化アルゴリズムと組み合わせるための新しいプログラムは、鳥取大学(FMM法=孤立系で長距離相互作用を高速に計算する方法)と大正製薬(PME法=周期系で長距離相互作用を高速に計算する方法)で開発が行われている。

 1ボード当たりの実効計算能力は4ギガFLOPSで、最大で19枚のボードを使用することで76ギガFLOPSというスーパーコンピューター並みの計算性能を実現できる。一度に100万個以上の粒子からなる系を計算することが可能。

 ボード自体は、233×160ミリメートルの小型サイズで、省スペースかつ通常のオフィス環境に設置可能という特徴もある。

 MDエンジンUは、大正製薬が開発に参加していることからもわかるように、主に新薬開発におけるたん白質シミュレーションをターゲットにしている。ただ、MDアクセラレーターとしては汎用的な機能を持つようで、プログラムを開発すれば材料設計分野などにも適用可能とみられる。製品には、ユーザーが利用できるライブラリーも付属している。