インフォコムがGastroPLUSを臨床開発分野に売り込み

体内での吸収性を改善、新薬の成功確率を高める

 2001.06.21−インフォコムは、同社が独占販売権を持つ新薬開発支援システム「GastroPLUS」を臨床開発分野に売り込んでいく。これは、ヒトの消化器官における薬物の吸収を予測することができるシステムで、臨床段階で吸収性が悪く落とされた化合物でも、製剤方法や投与方法の変更などによって臨床試験に復帰させることが可能になる。オプションモジュールの追加によってこれらの新機能が実現されたもので、新薬開発の成功確率を高めるツールとして注目される。

 GastroPLUSは、米シミュレーションズプラス社の製品で、薬物を経口投与した場合の消化管における吸収などの薬物の挙動を予測することができる。もともとは創薬研究で利用することの多いツールだったが、新しく追加された「PKPlus」と「オプティマイゼーションモジュール」によって、欧米では臨床開発での利用が広がってきた。

 欧米では、臨床開発のフェーズIと創薬研究との間で新薬候補化合物の出入りが激しく、日本の感覚よりも気軽にフェーズIに進み、ダメだったらすぐに落としたり、再度改良してまた臨床にあげたりすることが頻繁に行われるという。このときの大きなポイントの一つが“吸収”である。当然、薬理活性の高い化合物が臨床段階にあがってきているわけだが、吸収性が悪いと医薬品になることはできない。

 GastroPLUSの新モジュールは、候補化合物の吸収性を改善するための機能を提供する。薬物の吸収性は血中濃度の変化によって把握することができるため、剤型の変更によって血中濃度が向上するかどうか、さらには投与量や投与間隔の変更で血中濃度を高めることができるかどうかなどの検討を行うことができる。

 とくに、オプティマイゼーションモジュールを利用すると、理想的な血中濃度パターンを実現するように、薬物側の物理パラメーターを自動的に変更することが可能だという。

 いずれにしても、製薬産業には10個に1つしか医薬品にならないという効率の悪さが長年付きまとっており、改善が難しかったこの「10個に1つの法則」を乗り越える可能性を提供するものとして、大きな関心を集めているようだ。

 一方、シリーズ製品の「QMPRPlus」は、GastroPLUSのシミュレーションを行うための基礎データを作成するソフト。GastroPLUSの入力パラメーターは実測値であることが好ましく、その意味でも実際の臨床試験のデータが有効利用できるわけだが、QMPRPlusによって予測したパラメーターを使用することも可能だ。

 QMPRPlusに関し、最近欧米で注目されているのが、MDCK膜透過係数の予測機能だという。これは、犬の腎臓のMDCK細胞を使った膜透過性試験で、ヒトの細胞を用いるCaCo2試験に比べて細胞の培養期間が4分の1(CaCo2で12日間のところがMDCKでは3日間だという)と短いため、欧米で利用が広がっている。そのパラメーターを予測できるということでQMPRPlusが注目されているわけだ。また、脳への薬剤の到達しやすさの指標であるブラッドブラインバリア(BBB)を予測できることでも人気があるという。