富士通が代謝・酵素・阻害剤情報DBシステムを発売

創薬研究を効率化、6,000件の代謝反応を収録

 2001.8.13−富士通は、生物の基本的な代謝反応情報を収録したデータベース(DB)ソフトウエア「BioFrontier(バイオフロンティア)」(商品名)を発売した。綿密な文献調査などをもとに、現在知られている一次代謝反応をほぼ網羅して収めており、代謝に関係する酵素やその阻害剤の情報も統合している。新薬開発の初期の段階で、ターゲットの酵素を探索するなどの用途で利用することができる。ウィンドウズ版のソフトで、価格は120万円(アカデミック40万円)。年間数10−100本程度の販売を目指していく。

 BioFrontierは、もともとコンピューターケミストリーシステム(CCS)事業のパートナーだった呉羽化学工業が2年ほど前に開発したシステムで、これまでに約30本の販売実績がある。今年の4月にCCSのプログラムライブラリー「ChemLib」、化学構造式作図ツール「ChemFrontier」とともに富士通が版権を取得。今回、100%富士通製品としてあらためて新発売されることになった。キャンペーンとして、9月末までは2割引で提供する。

 BioFrontierは、生物種に共通の基本的な一次代謝反応の情報をまとめたもの。6,000件の代謝反応とそれにかかわる1,300種類の酵素情報、さらにそれらの酵素に対する8,300件の阻害剤情報を体系的にDB化した。

 とくに、豊富な検索機能が特徴で、構造式や反応式で検索できるほか、すべての反応をネットワーク式に関連づけて蓄積しているので、指定した化合物の周辺経路や反応の迂回経路(代償性経路)も簡単に探索できる。また、それぞれの反応の反応中心が表示されるので代謝の過程が理解しやすい。

 例えば、脂肪酸は20段階の代謝反応を経てコレステロールに変化する。それを書籍などで調べるのは手間のかかる作業になるが、BioFrontierは20ステップの経路を一度に検索することができ、その中の特定の反応をブロックした場合の迂回経路が存在するかどうかまでを一気に知ることができる。

 今回のシステムの中身は呉羽化学が販売していたものと同じだが、富士通では継続的にシステムの拡張を進めていく計画。一例として、富士通九州システムエンジニアリング(FQS)が塩野義製薬と共同研究(NEDOプロジェクトとして実施)したチトクロームP450を中心にした薬物代謝酵素DBを統合する計画がある。また、将来的には生物種固有の代謝反応を収録していくことや薬物の代謝予測機能の追加なども検討していきたいという。