菱化システムが加CCG社のMOE最新版を発売

ストラクチャーベース薬物設計機能、たん白質の活性部位を高精度予測

 2001.07.23−菱化システムは、加ケミカルコンピューティンググループ(CCG)の統合型コンピューターケミストリーシステム(CCS)である「MOE」(商品名)を新薬開発のアプリケーションで拡販する。このほど提供を開始した最新版で、ストラクチャーベースドラッグデザイン(SBDD)などの機能が大幅に強化されたため。たん白質の三次元構造を解析し、その活性部位やそこに適合する薬物分子の特性を探ることが可能で、たん白質研究に焦点が当てられるポストゲノム時代に有用性が高まるとしている。CCG側もゲノム創薬支援ツールとしての機能をさらに拡充していく計画だ。

 MOEのプログラムは、SVLと呼ばれる独自の言語で書かれたソースコードで提供されるため、中身がブラックボックスではなくカスタマイズが容易。CCSに手慣れたプロのユーザーに評価が高い。同時に、操作が簡単で価格も手頃なため、初めてCCSに取り組むユーザーにも好まれている。

 コンビナトリアルケミストリー/ハイスループットスクリーニング(HTS)、QSAR(構造活性相関)など、大量の化合物ライブラリーを作成したり評価したりする機能が充実している一方、たん白質のホモロジーモデリングを行う機能にも定評がある。これに加え、今回の最新版では、医薬品が作用する生体側のたん白質の構造に注目して薬物設計を進めるSBDD関連の機能が強化された。この結果、新薬の研究を一貫してサポートすることが可能になってきたという。

 今回のMOEには、プロテインデータバンク(PDB)に登録されている三次元構造が既知の全たん白質1万4,288件のデータが内蔵されている。大量データを高速に扱うデータベース機能によって、小さなノートパソコンでもこれだけの情報量を自在に扱うことが可能。立体構造が未知のたん白質に関しても、ここから類縁たん白質を検索し、アミノ酸配列の相同性を利用したホモロジーモデリングを行うことができる。

 とくに、SBDD機能の目玉の一つは、たん白質の活性部位(アクティブサイト)探索。たん白質の立体構造を幾何学的にサーチし、何らかの分子が入りそうな空間を自動的に探索することができる。非常に高速で精度も高い。その周辺部位のアミノ酸残基の配列を確認したり、疎水性・親水性を予測したり、表示モードを簡単に切り替えて目立たせたりすることも容易に行える。

 こうして発見したアクティブサイトに対して、実際に薬物分子を当てはめてみるドッキングスタディを行うことが可能。受容体側となるたん白質側の親水性・疎水性を予測できるので、単純に立体構造的にではなく、薬物分子側の親水性などの特性を考慮することにより、精度の高い検証が行える。もともとMOEは強力な配座探索機能を持っているので、将来的には候補化合物のさまざまな配座を発生させながら、アクティブサイトにフィットさせるような機能も可能になりそうだという。

 菱化システムでは、SVLの特徴を生かして、きめ細かなカスタマイズや新しい機能を組み込むなどの要望にも応じており、ユーザーから好評を博しているようだ。