米インターグラフ:ゲルハルト・サリンジャーPBS部門社長

プラントCAD、オーナーオペレーターに普及へ対日戦略強化

 2001.12.13−プラント設計のためのCAD/CAMシステムの最大手ベンダーである米インターグラフが対日戦略を強化する。2002年から2003年にかけて製品群を日本語化し、現在の主要顧客であるプラント建設やエンジニアリング会社を中心とする設計のプロを対象とした市場に加えて、プラントのオーナーオペレーター企業向けの市場を重点的に攻略する。インターグラフのなかで同事業を担当するプロセス&ビルディングソリューション(PBS)部門の新社長に10月末に就任したばかりのゲルハルト・サリンジャー氏に成長戦略について聞いた。

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 この1年、米国のIT(情報技術)産業は不振が目立つが、PBS部門の最近の業績はどうか。

 「今年は前年実績に対して11%成長のペースで推移しており、最終的には1億2,000万ドルの売り上げ規模に達すると予想(2001年12月期)している。財政的に非常に健全な状態で、開発費には2,500万ドルを当てている。この額は、プラントCAD市場の第2位ベンダーの売上高の3分の2に相当する」

 「当社は、この市場で二次元設計で35%、三次元設計では60%という高いシェアがあり、積極的な開発投資で製品の機能強化を行っている。さらに、新しい製品分野にも進出していることが好業績の要因だと思う」

 世界三極での売り上げ比率はどうなっているか。

 「欧州・中東が45%、北米・南米が40%、アジア太平洋が15%だ。成長率の高いのがアジアで25%以上の伸びがある。とくに、中国は今後3−4年で大きな市場になるとみている」

 日本市場におけるビジネスの現状は?

 「新技術の導入に積極的なユーザーが多く、当社にとって重要な市場だ。ただ、オーナーオペレーターへの普及が遅れている。エンジニアリング会社などのプロフェッショナル向けには英語のままでもよかったが、プラントオーナーに使ってもらうにはやはり製品を日本語化する必要がある。すでに、普及版のドローソフトである“スマートスケッチ”は日本語化ができているが、主力製品の“スマートプラント”を中心に、来年中には約半数の製品を日本語化する。2003年には主要製品の対応を完了させたい」

 オーナーオペレーターがCADを利用するメリットは何か?

 「プラントのメンテナンスや改造・増強などを検討する際に、設計データを再利用できるコストメリットを訴えていきたい。そのために役に立つ製品が、プロセス産業向けデータウェアハウスの“Notia”だ。一種のナレッジマネジメントツールでもあり、プラントの詳細な設計データ、メンテナンスの履歴データなど、エンジニアリングデータベースの一元管理を実現する。スマートプラントをはじめ、SAPやドキュメンタムなどの他社システムとの連携も可能。エンジニアリング会社とオーナーオペレーターがNotiaで情報を共有できれば、プラントのライフサイクル管理の面からみて、きわめて強力なソリューションとなり得る」

 日本市場における事業目標について。

 「オーナーオペレーターへの普及・浸透を通して、5年以内に売り上げ倍増を実現したい。例えば現在、ドイツでの売り上げは日本の2倍以上だが、ソフトウエアの潜在需要としてはむしろ日本の方が大きいはずだ。その意味でも、妥当な目標だと思う。PBS部門全体では、Notiaを中心とするデータ管理市場でも60%ぐらいのシェアを築けるようにしたい。全世界の売り上げ規模は5年以内に2億ドルを越えたい」

 最後に新社長としての抱負を。

 「インターグラフは技術志向の企業として知られているが、今後はむしろ顧客志向を強く打ち出し、ユーザーサイドに立った製品開発、ソリューション提供を進めていく。私はオーストリア出身で、もともとはケミカルエンジニアだ。インターグラフ初の外国人社長として就任した。その背景を生かし、外から顧客の視点でインターグラフという企業をみつめ、その要望を的確にフィードバックできるように努めたい」