IBMアジアパシフィック:マイケル.J.ディクソン副社長インタビュー

ライフサイエンス戦略を強化、総合力で圧倒的なリード

 2002.03.13−IBMは、バイオインフォマティクスをはじめとするライフサイエンス市場に本腰を入れて取り組みはじめた。2000年8月に本社に専門組織を設けたのに続き、昨年10月には日本IBM内にも専門部隊「ライフサイエンス事業推進部」を立ち上げた。当初は最初の3年間で1億ドルの投資を行う予定だったが、昨年秋の段階でそれを2億ドルに増額することを決めるなど、全世界で戦略をさらに強化する方針だ。この事業のアジア太平洋地域を統括するIBMアジアパシフィックサービスのマイケル.J.ディクソン担当副社長に今後の事業戦略を聞いた。

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 −IBMがバイオインフォマティクス市場に進出した狙いは?

 「テクノロジーには2種類あって、サイエンスの進歩がテクノロジーを発展させる場合もあるが、逆にテクノロジーがサイエンスの進化を促す分野もある。バイオインフォマティクスはまさに後者の典型であり、テクノロジー企業であるIBMが取り組むのにふさわしい市場だ。ヒトゲノムデータベース(DB)は3テラバイトの容量があるが、これを本にするとエベレスト山の18倍の高さにも達する。さまざまな生物種のゲノムを含めると、ゲノムデータは毎週1テラバイトずつ増えている。これは大きなビジネスになる」

 −具体的な製品戦略は?

 「第1にハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)分野がある。大規模で高速な計算能力を提供する。p690(レガッタ)はこの分野に最適なサーバーだ。さらに、2005年完成を目指してローレンス・リバモア国立研究所と共同で“Blue Gene / L”(ブルージーンL)というスーパーコンピューターを開発中だ。これは商用化も視野に入れている。また、話題のグリッドコンピューティングにも取り組んでいる」

 「2番目はストレージ製品である。現在のバイオインフォマティクス市場はHPCの売り上げが大きいが、データ量が爆発的に増大していることからして、数年後にはストレージ市場の方が大きくなる可能性もある。3つ目はデータベース管理システム(DBMS)で、われわれのDB2ユニバーサルデータベースをこの用途に売り込んでいく。ここでは、独自開発したDB統合化のためのミドルウエアであるDiscoveryLink(ディスカバリーリンク)が戦略製品になる」

 「第4はインテグレーション技術だ。これだけの大規模データをネットワーク上でセキュアに動かすことは容易ではない。IBMが培った大規模システムの経験を存分に発揮できる。5番目はパートナー戦略になる。IBMはミドルウエアまでの基盤技術を提供する企業であり、その上に具体的なアプリケーションをパートナーが構築する。パートナーのビジネスが成功することが、IBMの成功につながる」

 −さまざまなITベンダーがこの市場に進出してきている。IBMの強みは何か。

 「バイオインフォマティクスは複合的で非常に巨大なシステムだ。たくさんの要素がすべてうまく働かないとダメで、これだけの大規模ソリューションを包括的にサポートできるのはIBMだけだと思う。IBMの総合力にかなうベンダーは他にはいない」

 −日本市場における展開はまさにこれからだが、具体的な目標は?

 「とくに、顧客の要望を最優先で解決することに全力を傾けたい。とりわけ日本の顧客は、総合的な問題解決と具体的な成果を求めている。その意味で、日本市場ではDiscoveryLinkの提供に力を入れようと思う。これは、異なる複数のDBを1つの巨大なバーチャルDBのように扱うことを可能にする技術で、より広範囲な形での問題解決が可能になるからだ。今年は、DiscoveryLinkで日本市場に切り込んでいく」