NECが大阪大学からバイオ研究用大規模クラスターを受注

センター構想の一環でグリッドコンピューティングへの発展を計画

 2002.03.08−NECソリューションズは、大阪大学サイバーメディアセンター(CMC)からゲノム解析やたん白質構造シミュレーションなどのバイオ研究用大規模クラスターシステムを受注した。これは、ブレード型サーバーを中心に構成されたシステムで、大阪大学が推進している“バイオグリッドセンター構想”に基づく「バイオグリッド基盤システム」と呼ばれるもの。ネットワーク全体であらゆる計算機資源を共有し、大規模計算の高速処理を可能にする“グリッドコンピューティング”を実現するシステムへと発展させていく。この分野でバイオへの応用を目指す具体的なプロジェクトは国内初だという。

 バイオグリッドセンター構想は、阪大CMCをリエゾンセンターとし、蛋白質研究所や情報科学研究科、遺伝情報実験センターなどの学内研究拠点、さらには京都大学、大阪市立大学、大阪府立大学、国立厚生科学基盤技術研究所、国立循環器病センター、関西文化学術研究都市(けいはんな)などの周辺地域のライフサイエンス系研究機関を高速ネットワークで結び、ゲノム情報・機能解析、プロテオーム解析、未来医療、人材育成といった大きな課題に共同で取り組んでいこうというもの。

 今回、NECが受注したのはその中核ともなる「バイオグリッド基盤システム」で、ゲノムデータの解析システムとたん白質構造シミュレーションシステムの2種類のシステムから構成される。ゲノムデータ解析システムは、ブレード型サーバーExpress5800/BladeServerを78台(156プロセッサー)相互接続したもので、各サーバーに搭載した合計12テラバイトのディスクにより、大量のゲノムデータの解析作業を高速化できる。

 また、たん白質構造シミュレーションシステムは、ラックマウント型のExpress5800シリーズの8台を米ミリコム社の高速ネットワークMyrinet2000で相互接続したもの。遺伝子配列やアミノ酸配列、発現遺伝子などのデータベースを格納するための15テラバイトの大容量ディスクアレイ装置が接続されている。

 両方のシステムとも、OS(基本ソフト)にLinuxを採用し、クラスター処理を行うためのミドルウエア「SCore」を搭載している。システム全体はCMC(大阪府茨木市)内に設置され、当面は学内のギガビットネットワーク「ODINS」を介して学内の研究者に向けてサービスをするが、将来的にはバイオグリッドセンター構想の一環として計算機資源を外部にも開放する予定。

 NECでは今回の受注を、大容量のハードディスクを搭載しながら省スペースを実現したブレード型サーバーのハードウエア技術に加え、クラスタリングやグリッドコンピューティング実現に必要なミドルウエア技術まで、システムを構築し安定稼働させるための総合力が評価されたものと位置づけている。