米マイクロソフト:ジョン・コナーズCFOが会見

好業績を強調、粘り強さが強さの秘密、セキュリティ改善に大規模投資

 2002.05.01−米マイクロソフトのジョン・コナーズ上級副社長兼CFO(最高財務責任者)が来日し、4月26日に都内で記者会見を行った。会見のなかでコナーズCFOは、ハイテク産業の他社と比べて今年度の同社の会計状態の良好さを強調し、マイクロソフトの強さの秘密はしっかりしたビジョンを示し、根気と粘り強さでそれを達成していくところにあると論じた。苦戦が伝えられるXboxも、米国市場ではプレステ2を上回る販売成績をあげているとし、腰を据えて日本市場に取り組んでいくと述べた。

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 会見の冒頭で、コナーズCFOは米国のIT産業の近況について触れ、「経済環境などでどうしようもない時期も確かにあるが、どんな時でも当社は少なくとも競合他社よりも良い業績をあげることを目標にしている。2002年度でこれまでのところ当社以外に売り上げを伸ばしているのはAOLだけだ」と写真(FY02のハイライト、各社の売上高の伸び)を示した。また、「全米の株式時価総額はバブル崩壊前の2000年7月時点ではトップ10のうちの6社をIT産業が占めていたが、今年の4月現在ではトップ10に残っているのは当社とインテルだけだ。この間に、当社の株式時価総額も3,760億ドルから3,100億ドルに減じたが、他社の下がり方はもっと激烈で半減以上である。このため、当社のランキングは以前の4位から現在ではGEに次ぐ2位へと上昇している。これらすべては、当社が常に長期的な視点で戦略を立て、経営を行ってきた成果だと思う」と述べた。

 2002会計年度(2001年7月−2002年6月期)の第3・四半期までの9ヵ月間の実績では、「デスクトッププラットホーム分野の売り上げは69億ドルで前年同期比14%増。これはWindowsXPの成功が大きい。発売から2ヵ月間で1,700万本の販売を達成しており、当社の歴史のなかで最も成功したOSになったと言ってもいいだろう。企業向けのソフトおよびサービスは38億ドルで同6%増だ。伸びが小さく見えるが競合他社はこの分野で2ケタの落ち込みとなっている。SQLサーバーはすでに10億ドルのビジネスに成長しており、成長率はオラクルの2倍である。グループウエアのエクスチェンジサーバーも1億本のライセンスを出荷しており、すでにロータスの2倍だ。次に、コンシューマー市場は30億ドルで同82%増だ。ここにはXboxやMSN(マイクロソフトネットワークサービス)が含まれる。とくにMSNは継続的に粘り強く続けてきたおかげで加入者数が800万人に到達した。広告収入も33%増えている」と説明。地域別ではアジア市場がマイナス成長(7%減)となっているが、「これは為替レートの変動が要因であり、仮に円/ドルレートが一定だっからプラス成長だったと思う」とした。(写真:FY02売上高 211億ドルを参照)

 Xboxに関しては、日本市場の状況が不満足なものであることを認めたうえで、「われわれにとっては初めての種類のビジネスであり、日本市場の見通しを強気に立て過ぎていた。しかし、今後はこのような予測の狂いはない。腰を据えて粘り強く勝つまで続けていく」と述べた。コナーズCFOによると、今年のゲーム機市場は世界全体で900万−1,100万台の需要があり、そのなかでXboxは350万−400万台を販売する予定だという。「米国はきわめて順調で、一番最近のデータではXboxはプレステ2よりも25%多く売れている。欧州市場では値下げを実施した。これでプレステ2と対等以上に戦えると思う。日本では、今年はゲームタイトルがそろってくるので期待できる。とくに発売したばかりの“HALO”(ヘイロー)は自信作だ」とコメントした。

 一方、コナーズCFOはこれらの強力な製品群を支える研究開発投資の現状についても言及した。それによると、マイクロソフトは年間約50億ドルを研究開発に投資しており、そのうち数10億ドルがデスクトップやサーバー製品の開発に、約10億ドルがMSN関係に、数億ドルがXboxをはじめとするエンターテインメント分野に、さらに数億ドルがアドバンスドリサーチグループに費やされている。このグループは将来のコンピューティングモデルを研究しており、音声認識技術などを研究テーマにしているという。コナーズCFOが示した資料(写真:研究開発投資)によると、同社の投資額はIBMとほぼ同額であり、R&Dに巨額の予算を計上するといわれるファイザーやメルクなどの大手製薬会社をも上回る規模に達している。

 とくに近年、マイクロソフト製品のセキュリティの不備が問題になっているだけに、コナーズCFOはセキュリティの改善に重大な決意で取り組んでいることを強調した。「今年の1月にビル・ゲイツ会長から“Trustworthy Computing”(信頼のおけるコンピューティング)に関する通達が出た。これはインターネットへの進出を決めた時に匹敵する重要なメールだったと思う。サーバー製品群やオフィス製品群の開発に携わる全員がセキュリティに関するトレーニングを受け、アーキテクチャーとデザインとセキュリティの質という三つの観点から、すべてのコードの1行1行を完全に見直す作業に入っている。明確にはできないが、今年は研究開発投資のかなりの部分をセキュリティ面に費やすことになるだろう」と述べた。