インフォコムがシュレーディンガー創薬支援システムの最新版

ファーストディスカバリースイート2.5を提供、計算精度や機能を向上

 2002.12.28−インフォコムは、米シュレーディンガーが開発した創薬支援システムの最新版「ファーストディスカバリースイート2.5」(商品名)の提供を来年1月から開始する。ターゲットのたん白質の構造に合わせた薬物を設計する“ストラクチャーベースドラッグデザイン”(SBDD)に役立つ統合ツールで、この1年ほどで導入に勢いがつき、すでに国内で50−60サイトの実績を築くまでになっている。最新版は、計算精度や機能が大幅に向上しており、製薬会社などの民間向けに加え、大学などへの普及も期待できるという。

 ファーストディスカバリースイートには、薬物−受容体のドッキングシミュレーションを行う「Glide」、薬物−受容体の結合自由エネルギー計算によって構造最適化を行う「Liaison」、量子力学と分子力学のハイブリッド型計算により薬物−受容体クラスターの活性部位の反応解析などを行う「QSite」−の3種類のソフトウエアが含まれている。

 最近、シュレーディンガーは創薬支援をターゲットに製品体系を整備してきており、新薬候補化合物のリード探索の段階でGlideを、次のリード最適化の段階では構造修飾の検討にQSiteに加えて、非経験的分子軌道法ソフトのJaguarおよび分子力学をベースにしたコンホメーションサーチなどを得意とするMacroModelを、さらに構造最適化を精密に行うLiaisonやADME(吸収・分布・代謝・排出)特性を予測できるQikPropによってリード最適化をさらに深めるという全体構想を描いている。これにより、最終的に実物を合成して実験にまわす候補物質を100個程度にまで絞り込むことが可能だという。研究期間と費用の削減につながる。

 さて、今回のファーストディスカバリースイートの最新版では、Glide2.5はドッキング計算の精度が向上した。他社のソフトは、例えば結合ポケットの浅いキナーゼや逆にポケットの深いエストロゲンレセプターなど、得手不得手がある場合が多いが、Glide2.5はスコア関数の改良によりどちらの場合でも精度良く解析することが可能になったという。ドッキングの際に拘束条件を付与することもできるほか、通常のハイスループットモードのほかに時間をかけて高精度な解析を行うXPモードも搭載された。

 QSite2.5は、たん白質/アミノ酸に特化したハイブリッド型シミュレーターで、量子化学計算にはJaguarを使用している。とくに、金属元素が含まれるような系に強いことが特徴だが、最新版ではさらに遷移状態の探索機能が追加された。代謝酵素の反応経路を考察するなどの研究に役立つ。

 Liaison2.5には目新しい新機能はないが、力場パラメーターの強化などが図られている。

 シュレーディンガーの全製品は、統一GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)ツールのMaestroで操作できる。SGI/IRIX版に加えてLinux版も提供されており、コストパフォーマンスに優れたパソコン環境が利用できることもメリットとなっている。