米ロキシオのクリス・ゴログ社長兼CEOが会見

すべてのデジタルメディア体験を提供、ナップスターの合法的復活目指す

 2002.12.13−音楽や映像をCDおよびDVDに書き込むためのソフトウエアの最大手である米ロキシオのクリス・ゴログ社長兼CEOが11日、都内で記者会見を行い、デジタルメディア市場の展望や同社の事業戦略などについて説明した。ゴログ社長は「ほとんどすべてのパソコンユーザーがデジタルコンテンツを楽しむ時代になってきている。コンテンツの入手法やディスクの焼き方など初心者には難しい面もあるが、楽しく使いやすいツールとサービスでそれを助けるのが当社の使命だ」と述べ、来年にはあらゆるデジタルコンテンツをまとめて扱うことができる新製品「デジタルメディアスイート」を発売することを明らかにした。また、注目のナップスター買収に関しては、「ナップスターというブランドそのものが最も重要だと考えている。合法的なサービスとしてナップスターを復活させることを目指す」とした。

 発言の要旨は以下の通り。

 − 書き込み型のCDやDVD装置の普及率の上昇、デジタルカメラやビデオの販売台数、音楽ダウンロードサイトの発達などの背景からみて、電子的なコンテンツをデジタルメディアで楽しむ市場は今後ますます拡大するだろう。音楽やビデオ、写真などをパソコン上で管理し、CDやDVDに焼き付ける当社のソフトウエア製品にはすでに全世界で1億人のユーザーがおり、2005年には2億人に達するとみている。

 − これからは、あらゆるデジタルメディア体験を包括的にユーザーに提供していきたい。このため、来年の初めに新製品として「デジタルメディアスイート」を発売する。これには「Easy CD&DVD Creator」の最新版6.0、あらゆる音楽ファイルを一元管理できる新ソフト「Audio Central」、DVDオーサリングソフトの「DVD Builder」、デジタル写真の管理と画像編集ができる「PhotoSuite」、CD/DVD焼き付けのための古典的ツールとして「Creator Classic」、また便利なユーティリティー群も含んでいる。その1つである「Drag to Disk」は、音楽でも映像でもどんなファイルでもアイコンにドラッグ&ドロップするだけでディスクに焼くことができる。来年の春先には日本語版も提供できると思う。

 − パッケージを補完するサービスビジネスが拡大している。音楽をダウンロードできる「pressplay」、写真の公開や共有が簡単に行える「snapfish」、書籍の朗読を音声ファイルとしてダウンロードできる「audible.com」、VHSテープをDVDに変換するサービス「yesVIDEO」の4種類を提供している。デジタルメディアをすべての人が楽しむ時代になったとはいえ、どこで音楽を入手できるのか、デジタル写真をどう扱ったらいいのかわからない人も多い。その意味で、パッケージとサービスは相乗効果を生んでいる。来年は、日本でもサービス事業を開始する準備をしていきたい。

 − ナップスターの買収手続きは11月末に完了した。ナップスターの資産、技術、知的財産、特許のすべてを取得した。ただし、ナップスターが抱えている訴訟や賠償責任は一切引き継いでいない。ナップスターに関しては、共有ファイル技術や各種特許も貴重だが、ブランドそのものが最も重要だと思っている。われわれの調査では、97%の消費者がナップスターの名前とサービス内容を認知しており、しかも好意的な人が多かった。ナップスターのサービスに対価を支払ってもいいという人も少なからず存在した。具体的な事業案はまだ発表できないが、合法的なサービスとしてナップスターを復活させることを目指していく。

 − われわれは非合法な海賊サイトは断固として排除していくし、デジタル時代にアーティストの権利が守られなければならないという立場にも賛成だ。ただ、当社としてはデジタル配信ビジネスを合法的に成り立たせる努力に力を注いでいきたい。一部のレコード会社などのコピープロテクションは、合法的ユーザーのデジタルメディア体験を阻害するものでしかないと思うが、現時点ではデリケートで難しい問題を含んでおり、一概に反対できないところがある。