CCS特集:ナノシミュレーション

MDアプリケーションの新分野開拓へ、燃料電池・半導体分野に焦点

 2003.06.26−ナノシミュレーションは、分子動力学法(MD)の専門ノウハウを持つベンダーで、独自に開発したMDソフトである「NanoBox」を提供するとともに、実際の研究に適用するにあたってのコンサルティングサービスを含めた事業展開を行っている。これまでは、液晶材料開発を主なターゲットにしてきたが、今後はさらに新しいアプリケーションを広げることにも力を入れていく。

 液晶材料の物性予測では、フランク弾性定数や回転粘度などの重要な特性をシミュレーションで求めることに成功しており、評価も高まってきている。しかし、液晶デバイスの基礎研究は、ここへ来て日本から韓国や台湾にシフトしつつあるのが現状。以前にこれらの地域からの引き合いが寄せられたこともあり、今後は積極的にNanoBoxを販売していきたいという。

 逆に、国内向けでは新しい用途開発に力を入れる。その一つが燃料電池分野。例えば、自動車分野ではいままではガソリンに対する耐性が要求されていたシール材に、今度は高圧水素ガスへの対応が求められるようになってきている。これは、水素ガスと高分子との相互作用の問題として扱えるが、水素に圧力がかかっているため、シミュレーションとしても難しいテーマといえる。MDに関するかなりの専門知識と経験が必要。それをサポートしようというわけだ。実際、実験装置が大がかりなものになってしまうため、計算で評価することでコストダウンにつながるとの期待もある。

 また、水素貯蔵材料に関しても今年から来年にかけての重点テーマとして取り組んでいく。合金系のものが多いが、最近では有機系材料の研究も進んでおり、これを計算のターゲットとする。

 さらに、最近になって半導体材料がMDシミュレーションの適用領域に入ってきたという。例えば、ギガヘルツ帯域の周波数は振幅がナノ秒オーダーとなる。これは、MDでカバーできる世界だ。高周波帯域で損失の少ない低誘電率なレジスト材料や封止材料、絶縁材料などの開発にMDが役立つ可能性が出てきたのだという。このあたりは研究段階の取り組みともなるが、どんな成果がみられるか興味深い。