日本オラクルが次世代製品Oracle10gを発表

企業向けグリッドコンピューティングを実現、運用管理も高度自動化

 2003.10.07−日本オラクルは6日、次世代製品「Oracle10g」(オラクル10g)を来年1月29日から出荷開始すると発表した。企業向けの本格的なグリッドコンピューティング環境を具体化した製品で、複雑なシステムの運用管理を自動化する機能も組み込まれている。同社では、出荷開始に向けて、国内のパートナーと協力して技術検証施設の開設や対応技術者の養成、対応パッケージ製品の開発支援活動、開発者向けの早期アクセス制度などを展開していく。

 グリッドコンピューティングは、電気や水道のように必要な時に必要なものが必要なだけ供給されるという意味で“ユーティリティコンピューティング”とも呼ばれる。会見の中で同社の山元賢治取締役専務執行役員(セールス・マーケティング・開発総括担当)は、全国の電力会社が電気を生産し供給する現在の体制を「メインフレーム時代の一極集中方式」に例え、「電力が自由化され、中央に存在する電力取引所を通じて、いろいろなところでつくられた電力を一元的に管理し、需要に応じて必要なところに電力を送り出すようにするのがグリッドコンピューティングである」と説明した。

 同氏によると、この時に重要な要素が3つあるという。「第1に仮想化という技術。われわれは自分が使っている電気がどこでどのようにつくられたものなのか、まったく気にしていない。ユーザーに意識させずにリソースを供給するためには“仮想化”が必要になる。2番目はリソースのプーリングだ。実際のリソースは物理的に分散しているため、全体を1つとして管理された状態に置かなければならない。最後はプロビジョニングと呼んでいる技術で、いままでの実績や予想に基づいて需要を見通してリソースを実際に割り当てていく。Oracle10gではこの3つを具体化し、企業向けのグリッド環境を実現した」と述べた。

 新しいOracle10gファミリーは、現行のOracle9iの製品体系を引き継いで性能や運用管理性などを向上させた「Oracle Database 10g」」(DB10g)と「Oracle Application Server 10g」(AS10g)に加え、グリッド環境の基盤を提供するミドルウエアとしての「Oracle Enterprise Manager 10g」(EM10g)を含めた3つの製品群から構成される。とくに、EM10gの“グリッドコントロール”機能の働きにより、“ストレージグリッド”と“データベースグリッド”、“アプリケーションサーバーグリッド”−の3種類のグリッド環境を構築できる。また、IBMのオートノミックコンピューティングと同様のコンセプトでそれぞれが高度に自動化されており、複雑なグリッド環境でも運用管理が容易なことが特徴となっている。

 会見のなかでは、NECと富士通のブレードサーバーを実際に用いて、処理の負荷がかかった際にノードを動的に追加し、パフォーマンスを改善するデモンストレーションが行われた。

 同社によると、今回のOracle10gは、1995年に全製品のインターネット対応をうたったことや2000年にウェブサービス志向を打ち出したことに続く重要なメッセージになるという。とくに、Oracle9i登場時は“メガサーバー/メガデータベース”と称し、大型大規模サーバーに資源を集中させる構想を示していたが、今回のOracle10gはブレード型サーバーの多重分散環境を中心に想定している点で大きな違いがある。

 今回のデモでも示されたように、グリッドコンピューティングではシステムが稼働しているCPUがダイナミックに増えたり減ったりする。現在のオラクルのライセンス体系はCPUライセンスと指名ユーザーライセンスの2種類であり、どちらもグリッド特有の運用形態には合っていない。今回は価格やライセンス体系は発表されなかったが、出荷までには新しい価格体系が導入されることになりそうだ。

 さて、同社ではOracle10gの市場投入に向けた準備段階としてさまざまな施策を展開中。すでに国内の30社でベータプログラムを実施(世界では200社以上)しているほか、主要Javaアプリケーションフレームワーク製品22種類の移植支援作業を進めている。また、9月には主要パートナーと技術検証施設を立ち上げた。

 今後、開発者や管理者向けの技術教育サービスを提供するほか、120種類の国産アプリケーションパッケージを対象にした開発支援制度も開始する。また、出荷開始に合わせて導入を後押しするためのコンサルティングサービスの提供を開始する予定。今年の12月17-18日には「オラクルワールド東京」の開催が計画されており、その場でOracle10gの情報が大々的に取り上げられるという。