2004年春季CCS特集:日本総合研究所

製品版リリースへ向け事業活動を本格化、実践セミナー開催へ

 2004.06.30−日本総合研究所は、経済産業省プロジェクトを通して開発された次世代材料設計支援システムJ-OCTAの本格的な普及に向けた活動を強化する。提供中のベータ版を用いて、基本的な例題をベースに使い方を講習する実践セミナーを連続開催し、来年3月の製品版リリースにつなげる考え。

 開発母体となった「土井プロジェクト」(http://octa.jp/)のサイトからはフリー版をだれでもダウンロードすることができるが、フリー版OCTAは計算化学理論の最先端を行くソフトウエアであり、使いこなすためには利用者がその学問的スキルに到達している必要がある。それをある程度だれにでも使いやすくしたのが、商用版のJ-OCTAであるという位置づけ。操作性を大幅に改善し、解析手順をシナリオ化できたり、事例データベースを備えたり、外部プログラムと連携が容易だったりするなど、実際の研究に役立つ機能が追加されている。

 もともとは高分子材料のメソ特性のシミュレーションを目的に開発されたが、最近のアプリケーションではスピンコーティングへの応用が注目されているという。これは遠心力で塗膜を広げ、均一な高分子薄膜を形成するという技術で、自動車や電気製品などの高級感を高めるための塗装のトップコートに利用されている。ただ、実際には均一な薄膜を得ることは非常に難しく、たいへんな実験を繰り返して素材の組成や塗装条件を決めているのが実態なのだという。

 J-OCTAに内蔵されている多相構造/分散構造シミュレーターMUFFINを利用すれば、粘度や溶剤の蒸発速度を精密に解析し、適切な溶剤の選択や基盤からのはがれの防止などの問題に関して知見を得ることが可能。

 同社は、機械設計や構造解析などで豊富なコンピューターシミュレーションの経験を持っており、あまり詳細な理論にとらわれず、ツールとして実際的な問題にいかに応用を図るかという観点からJ-OCTAの普及を図る考えである。

 このため、6月末から順次開催する実践セミナーでは、実際に操作しながら基本的な例題を解くことによって、利用法に示唆を与えることを目的にしている。具体的には、6月から8月にかけては粗視化分子動力学のCOGNAC、9月から11月にかけては動的平均場法のSUSHI、12月から来年2月かけてはMUFFINといったかたちで、J-OCTAの解析エンジンを一つずつ取り上げていく。