NECと高知大がC型肝炎ワクチン候補物質を発見

HLA結合ペプチド予測ソフトを活用、愛媛大での臨床試験を予定

 2004.07.24−NECは22日、高知大学との共同研究により、C型肝炎に対する予防および治療効果が期待できるペプチド医薬品の候補物質を発見したと発表した。これは、昨年6月から推進しているプロジェクトで、細胞内のHLA(ヒト白血球抗原)分子に結合するペプチドを高精度で予測するソフトウエアを開発し、それを用いて実際に候補物質を見いだすことに成功した。今後、この候補物質が免疫機構の活性化を促すかどうかの確認実験を経て、具体的な臨床試験に進む予定である。

 HLAには、9残基のアミノ酸から構成されるペプチドが結合することが知られているが、そのアミノ酸残基の組み合わせは全部で5,000億通りにもなってしまうため、実験ですべてを確かめることは不可能。そこで、研究グループはコンピューターで予測する技術に着目し、NEC独自の“能動学習法”と高知大学免疫学教室の宇高恵子教授らのHLA結合ペプチド実験技術を組み合わせて、日本人に多いHLA-A24型分子への結合能が高いペプチド配列を予測するソフトウエアを開発した。つまり、今回の候補物質はこのソフトが予測したC型肝炎ウイルス(HCV)由来のペプチドだということになる。

 NECと高知大学は、今回のペプチド配列を共同で特許出願するとともに、愛媛大学医学部の恩地森一教授らと協力して、このペプチドが実際に生体の免疫機能の活性化を起こすかどうかの確認実験を実施中。活性化が確認できれば、愛媛大学医学部付属病院での臨床試験に入る。最終的には、製薬会社との連携のもとに具体的な医薬品の開発を目標としていく。

 研究グループではさらに、欧米人に多いHLA-A2型分子へのHCV由来ペプチドの予測と検証を進めるとともに、SARS・インフルエンザなどの代表的な感染症や、がん抗原、花粉症などに代表されるアレルギー疾患に対するペプチドワクチン候補の探索も進めていく計画である。

 なお、今回の予測ソフトの技術的な詳細などについては、過去の記事「NECが高知医科大とHLA結合ペプチド予測ソフトを実用化」「NECと京大・宇高助教授らが高効率バーチャルスクリーニング技術」を参照されたい。