アクセルリスのナノテクコンソーシアムに14社のメンバーが参加

日本からも2企業/2大学、ONETEPなどの開発成果をリリース開始

 2005.04.27−アクセルリスは、昨年7月からスタートさせた「ナノテクノロジーコンソーシアム」に現在までに14社のメンバーを集めた。これには、日本の化学会社2社と2つの大学が含まれている。このコンソーシアムは、センサーや半導体デバイス、高機能材料などのナノテクノロジー分野の研究開発を支援する統合ソフトウエア技術の実用化を目指すもので、期間は2007年6月まで。すでに数千原子の大規模な系に対応できる量子化学計算プログラム「ONETEP」のリリースも行われており、メンバーはこれらのソフトを用いて実際に研究を進めることが可能。アクセルリスでは、追加募集活動をさらに強化していく。

 アクセルリスは、最先端領域のコンピューターケミストリーシステム(CCS)技術開発を進めるために、メンバー企業を募ってプロジェクトを進めるコンソーシアム形式を採用している。このナノテクコンソーシアムもその最新例の1つ。メンバーには、開発成果物の一定期間におよぶ先行独占使用権が与えられるほか、コンソーシアム終了後に製品版を購入する場合のほぼ半額で永久使用権を確保できるという金銭的メリットがある。また、開発計画への投票権があり、専任チームによる高度な技術サポートと上級トレーニングを受ける機会も与えられる。

 プロジェクト全体は、大規模系の計算(分子サイズ)、大規模系の計算(時間スケール)、電荷移動特性の計算、ナノ材料モデリングのための力場開発、ナノデバイス開発に役立つ各種物性予測ツールの開発、ナノテク分野向けのモデルビルダーの開発−などに分かれ、それぞれに専門技術陣による開発が行われる。

 昨年10月に第1回ミーティングが開かれ、メンバー各社からの要望を吸い上げたあと、昨年11月に最初のリリースとして豪州カートゥン大学のジュリアン・ゲール教授らが開発したGULP(http://gulp.curtin.edu.au/)が提供開始されている。これは、原子間結合の形成・切断をともなう複雑なナノ材料システムの大規模(時間スケール)シミュレーションに威力を発揮する反応性力場プログラム。続いて、今年の4月に数千原子系の密度汎関数法(DFT)計算を実行できるONETEP(http://www.tcm.phy.cam.ac.uk/~cks22/onetep.htm)もリリースされ、センサーチップの先端などをモデル化するためのクラスタービルダー、またナノチューブビルダーなどのグラフィック機能も用意された。

 今後の開発計画では、時間スケールの大規模計算で、GULPに加えて、化学変化の起こる特定部位においてDFT計算による力場パラメーター変更を動的に行うことにより、ナノ秒スケールの分子動力学(MD)計算を実行できるLOTF法(Learn-On-The-Fly)の採用が予定されている。また、電荷移動特性の計算では、電流電圧特性や散乱・透過状態の特定、定量的なSTMイメージなどのシミュレーションを可能にするNEGF(Non-Equilibrium Green's Functions)を取り入れる。これは、バイオセンサーのようなナノバイオ材料の開発に役立つという。さらに、物性予測ツールの開発では、Dmol3やCASTEP、Discoverなどのアクセルリスの既存計算エンジンを利用してさまざまな電子・光学・力学・振動特性などを予測できるようにしていく。

 現在のメンバー企業は14社で、コーニング、富士通、e2vテクノロジーズ(英国のセンサー部品メーカー)、英国インペリアルカレッジ、ウプサラ大学(スウェーデン)−の名前が明らかになっている。このほかに、日本企業の2社と日本の2大学が加入している。富士通は日本からではなく、欧州の拠点が入っているものだという。コンソーシアムの費用は3年分を支払えばいいため、いまからでもメンバーになることは可能で、アクセルリスでもさらに募集活動を積極的に行う方針である。

 2005.06.17(加筆分)−上記に名前のあがっている5つのファウンダーメンバー以外のメンバーが公表された。メンバー数は全部で15に増えており、ジョンソンマッセイ、ミレミアムケミカルズ、スケナクタディーインターナショナル、PPG、IZM、IFAM、京都大学、北陸先端科学技術大学院大学。あと2社の日本企業についてはまだ公表されていない。