マイクロソフトがWindowsXPのx64版を6月1日から正式提供

4,000倍の仮想アドレス空間を利用可能、32ビットエミュレーターWOW64搭載

 2005.05.25−マイクロソフトは24日、AMD64とインテルEM64Tプロセッサーに対応した「WindowsXPプロフェッショナルx64エディション」日本語版を開発、6月1日から提供開始すると発表した。当初は、科学技術計算などのエンジニアリング用途やマニアユーザー向けを中心とするが、2006年中にはこのx64版がパソコン市場の主流になるとしている。ライセンス価格は現行の32ビット版XPと同じだが、小売り用のパッケージやアップグレードパスは用意されない。自作ユーザー向けにパーツとのバンドル販売は行われる。

 今回のx64版WindowsXPは、最大128ギガバイトのメモリーを搭載でき、32ビット環境の4,000倍に当たる16テラバイトという広大な仮想アドレス空間を利用することができる。また、32ビットプロセスの仮想アドレス空間を2倍の4ギガバイトにまで拡張するオプション(LARGEADDRESSAWAREオプション使用)を組み込んだほか、システムキャッシュも1,000倍の1テラバイトを実現(ファイルI/Oのアクセス数を激減させる)しているため、従来の32ビットアプリケーションも高速化することが可能。(別表参照)

 32ビットアプリケーションはOS上のエミュレーションレイヤーである“Windows32 on Windows64”(WOW64)を介して動作する。このサブシステムは、プロセスの起動時ではなく、OSの起動時に自動的にロードされる。具体的には、32ビットアプリケーションからシステムコールが発せられると、WOW64がそれをインターセプトして、64ビットシステムファイルを利用できるようにする。32ビット環境と64ビット環境をうまく混在させるため、レジストリーやファイルシステムをリダイレクトする仕組みが組み込まれている。

 これにより、基本的にはほとんどの32ビットアプリケーションを実行できるが、デバイスドライバーはすべて64ビット化されていなければならない。ただ、ドライバーを直接呼び出すようなアンチウイルソフトやDVDライティングソフトなどは動かないという。マイクロソフト製品にはそれに該当するソフトはないが、現段階では同社のすべての32ビットアプリケーションがWOW64で動くかどうかは保証できないということだ。

 さて、今回のx64版WindowsXPに関してはOEM版が中心であり、基本的にはパソコンにプリインストールされて提供されることになる。現在、デルと日本IBM、日本ヒューレット・パッカードは「テクノロジーアドバンスメントプログラム」に参加しており、x64対応パソコンで32ビット版WindowsXPを使用しているユーザーは、無償でライセンスをx64版に変更することができる。

 また、ボリュームライセンス契約を結んでいるユーザーに対しては、x64版のメディアキットが無償提供されるので、契約しているライセンス数の範囲内で32ビット版とx64版を自由にインストールすることができる。








32ビットと64ビットのメモリー仕様


資料:マイクロソフト

メモリー制限 32ビット 64ビット
仮想アドレス空間(全体) 4GB 16TB
32ビットプロセスの仮想アドレス空間 2GB (3GB:Boot.ini / 3GB) 4GB or 2GB (/LARGEADDRESSAWARE リンカーオプション)
64ビットプロセスの仮想アドレス空間 N/A 8TB
ページプール 470MB 128GB
非ページプール 256MB 128GB
システムキャッシュ 1GB 1TB
物理メモリーとCPUの制限    
WindowsXP Professional 4GB / 1-2 CPUs 128GB / 1-2 CPUs
Windows Server 2003 Standard Edition 4GB / 1-4 CPUs 32GB / 1-4 CPUs
Windows Server 2003 Enterprise Edition 64GB / 1-8 CPUs 1TB / 1-8 CPUs
Windows Server 2003 Datacenter Edition 64GB / 1-32 CPUs 1TB / 1-64 CPUs