米リアクション・デザイン:ローゼンタール新CEOインタビュー

産業別ソリューションにフォーカス、シミュレーション主導の研究を後押し

 2005.06.21−詳細化学反応シミュレーター「CHEMKIN」で知られる米リアクション・デザインは、今年の2月末に新しいCEOとして、バーニー・ローゼンタール氏を迎えた。同氏の前職はテンシリカ社の上級副社長で、20年以上にわたってEDA(エレクトロニック・デザインオートメーション)分野で活動してきた経験を持つ。同社はこれまで、テクノロジー(ソフトパッケージ)の提供を中心にしてきたが、今後は産業ごとにフォーカスしたソリューションプロバイダーの方向に大きく舵をとっていきたいという。とくに、ガスタービン、自動車、化学(触媒)などのアプリケーションに力を注ぐ。

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 − リアクション・デザインの製品について教えてください。

 「CHEMKINはもともと米サンディア国立研究所で開発されたソフトで、1997年から当社が商品化している。化学物質の物性データベースを利用し、複雑な反応メカニズムを素反応をベースで詳細に解析できることが特徴で、この詳細化学反応モデルを流体解析ソフトに組み込むためのKINeticsというプログラムも用意している」

 「従来の総括反応速度式を用いた解析では、なかなか実験値と合う結果は得られない。詳細反応モデルを使えば、実験をよく再現できるので、シミュレーションを主体とする研究プロセスを実現できる。計算が実験に代わることによって、技術面でもビジネス面でも大きなインパクトをもたらす」

 − ご自身はEDA分野の出身で、やや畑違いですが・・・

 「むしろEDA市場での経験が生かせると思う。この20年間を通し、シミュレーション技術がエレクトロニクス分野で受け入れられ、浸透していく過程をつぶさにみてきたわけだが、化学はいままさにシミュレーションに注目し始めた段階にある。そのシフトを後押しし、さらに加速させたい。例えば、自動車分野では、環境面からNOxや煤を出さない燃焼機構の開発が重要になるが、詳細化学反応を考慮すれば高精度な予測が可能なので、合理的な設計が行えるようになる。複雑な触媒反応も扱えるため、化学プラントのプロセス改善にも役立つ」

 − 実際にリアクション・デザイン社のCEOに就任して、どんな感想を持たれましたか。

 「社内の組織としては、化学や反応、シミュレーションに関して深い知識を持った技術陣に感心した。また、若い学生から大企業の研究者まですでに多くのユーザーがいることにも驚いた。現在、350以上の機関に導入実績があり、毎年1,500人の学生がCHEMKINの技術を修得している。そして、EDA分野での経験を生かせる市場だとすぐに気づいた」

 − 今後の舵取りについて教えてください。

 「なによりも顧客第一主義の徹底だ。顧客が抱えている問題を理解し、われわれのテクノロジーで解決策を提供する。そのためにも、ソリューション主導のビジネスモデルへの転換を進めたい。ガスタービンや自動車、化学などの産業にフォーカスした製品づくりを行う。個別のユーザーとの共同開発も含め、その分野で必要な補助的なソフトの開発などにも取り組んでいきたい。また、日本は非常に重要な市場であり、積極的に要望を取り入れたいと考えている」

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 ローゼンタール氏は南カリフォルニア大学卒。シノプシス、アプライドマイクロサーキット(AMCC)、TRWでマネジメント職を歴任。共同創設者としてテンシリカを設立している。リアクション・デザインの創設者兼CEOだったデイビッド・H・クリプシュタイン氏からCEOの地位を引き継いだ。なお現在、クリプシュタイン氏は新たに設けた執行副社長の地位についている。