プロセスエンジの新ベンダー「preFEED」が旗揚げ

新プロセスのスムーズな工業化を支援、コンサルとソフト開発で特異なノウハウ発揮

 2005.09.02−ファインやスペシャリティを含めた化学工学の複雑な問題を特異なノウハウで解決する新ベンダー、preFEED(プレフィード、本社・横浜市港南区)が旗揚げした。とくに、研究室における実験と工業化のための初期設計の間のギャップに注目し、化学会社が独自の新商品をスムーズかつ短期間に市場に送り出すことができるように総合的な支援を行う。住友化学のプロセスエンジニア出身で、欧米のプロセスシミュレーションベンダーの日本法人の代表を歴任した経歴を持つ熊谷善夫社長は、「プロセス設計のための使いやすいソフトは普及したが、今後実際的な難しいプロセスを工業化していくに当たっては、単なるソフトの使い方ではなく、シミュレーションの本質的なところでの理解が重要になると思う。当面はコンサルティングを中心に事業展開し、中期的にはソフトウエア開発にも乗り出していきたい」とする。

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 同社(http://www.prefeed.com)の設立は今年の4月で、7月から本格的に業務を開始したばかり。現在は、若い技術者向けの技術講習会が人気を集めている。熊谷社長は、「昔のエンジニアはすべて手計算だったため、化学工学の知識はすごいがコンピューターには不慣れ。逆に最近のエンジニアはシミュレーションソフトを容易に使いこなすが、計算がブラックボックスになっており原理原則を理解していない」と指摘する。化学業界のグローバルな競争が激化するなか、プロセスは海外からのライセンス導入に頼るのではなく、自力での開発がメインになっていくとみられる。このため、プロセス設計の技術力強化が重要な課題になるというのが熊谷社長の見方だ。

 そこで、この講習会ではシミュレーションソフトを使用せず、表計算ソフトと方程式解法ソフトだけを使ってプロセス計算の本質を教えているのだという。教育コースの拡充にも取り組むと同時に、10月からは化学工学会の教育プログラムの中で講座(http://www.scej.org/jp_html/jinzai/gyoji-items/kouza-modeling.htm)を受け持つことも決まっている。

 当面の事業として中心になるのはコンサルティングだが、プロセス開発のための実験計画立案とデータ解析、プロセスのスケールアップとモデル化、シミュレーション検討、プロセス構築などの技術面に加え、エンジニアリング部門の組織化、開発ルールづくり、技術伝承のためのベストプラクティスなど、マネジメント面での提案にも力を入れる。

 「とくに、スケールアップトラブルを防止したうえで工業化までの期間を短縮するためには、実験データをもとにして最も望ましい初期プロセス案を構築したり、晶析やろ過、乾燥などの複雑な事象をモデル化・シミュレーションしたり、反応器内部の流動解析とプロセスシミュレーションを同時に実施し、結果を解釈したりすることが重要になるが、どれも単純にシミュレーターを操作しても解くことのできない問題ばかり。それらをコンサルティングで解決したい」と熊谷社長。複雑な分子や固体を含むプロセスが多いファインやスペシャリティ分野が主要なターゲットになるという。

 また、今後3−5年をめどに独自のパッケージソフト開発にも乗り出す考え。熊谷社長は、「とくにレポーティングソフトに関心がある。設計フェーズ以降の技術文書は、プロセスフロー図から二次元設計、三次元モデル、材料集計へとシーケンシャルに流れていくが、研究開発段階では反応式(化学式・構造式)、生データ(表とグラフ)、仮説と検証(テキスト)、現象のメカニズム考察(図)、モデルの基礎式(数式)などさまざまな要素を含み、しかも新しい知見が次々にみつかったり、検討をやり直したりと、試行錯誤が常に生じるため文書の流れは複雑になる。各要素を1枚の文書に貼り付けてレポートをつくることはできるが、それはただの“絵”であって、生きたデータではない」と述べる。

 「当社で開発してみたいのは、いわばライブドキュメントツールで、ドキュメントの中で数式を直すと計算結果が変わり、実験条件を修正するとシミュレーターが再度実行されるようなイメージだ。テキスト、表、グラフ、構造式・反応式、フローシート、化学工学計算、プロセスシミュレーションなどの要素をドキュメントの中でライブに結びつけて取り扱うことができる。イメージに近いソフトもいくらかはあるが、プロセスエンジニアリングに使うには機能が足りない。ぜひ、当社で製品化を実現し、世に出したい」。研究者の日常業務を支援する新発想のツールとして期待されるところだ。

 熊谷社長は、市場のテリトリーとしてアジアも意識しており、まずは年内に韓国で技術講習会を開催したいという。「まだスタートしたばかりなので、3年くらいかけてじっくりと会社のプレゼンスを上げていきたい」と話す。

* 熊谷善夫(くまがえよしお)社長は、1981年から1994年まで住友化学で勤務したのち、リンホフマーチとアスペンテックジャパンで社長を務めた。preFEEDの本社所在地は横浜市港南区野庭町108-1-602、電話080-1060-2713。