アドバンスソフトが地球シミュレータを利用した受託計算サービス

ナノ特性解析・ドッキングシミュレーションなど実施、大規模問題への対応実現

 2005.11.24−アドバンスソフトは、コンピューターケミストリーシステム(CCS)などの分野で、海洋研究開発機構に設置されている「地球シミュレータ」を利用した受託解析サービスを開始した。同社は昨年度まで実施された文部科学省プロジェクト「戦略的基盤ソフトウエアの開発」(FSIS)で作成されたプログラムの商用版を開発・販売しているが、そのあとを受けた「戦略的革新シミュレーションソフトウエア」(RSS)プロジェクトとの連携で各プログラムの地球シミュレータへの移植と最適化を実施。その成果を新サービスとして提供することにした。費用はコンサルティング込みで個別見積もりとなるが、典型的なケースで約300万円という。

 今回のサービスは、地球シミュレータの民間利用を促進するための活動の一環という側面もある。FSISプロジェクトで開発されたプログラム群は、もともと計算パワーが必要な大規模問題に適しているため、地球シミュレータ上で動かすことによって、いままでは計算にかけられなかった問題を処理することも可能。

 具体的には、ナノデバイスなどの材料特性解析に利用できる「PHASE」、たん白質と化学物質の相互作用解析を量子力学的に行う「バイオステーション」、複雑な流体問題の解析が可能な「FrontFlow」、大規模問題の構造解析に適した「FrontSTR」などの計算エンジンを利用できる。複数のエンジンを組み合わせた連成解析にも応じる。

 いずれのプログラムも地球シミュレータのベクトル並列処理(640ノード/5,120プロセッサー構成)向けに高度に最適化されており、例えばPHASEは300ノードを使って計算を実行した実績を持っている。

 ただ、実際に解析を受託する際には、計算したい対象や求めたい物性などに合わせてプログラムや計算条件を変更したり、場合によってはプログラムに新しい機能を追加して組み込んだりする必要も生じる。同社では、コンサルティングによってユーザーの要求を分析し、フルサポートでのサービスを実施していく。

 国内最速の環境でシミュレーションが行えるため、研究の時間短縮に効果があるほか、計算精度の飛躍的な向上が得られるというメリットもある。また、これまでは計算が不可能だった大規模問題にも対応できることで、まったく新しい知識の獲得につながる可能性も出てくる。