中部電力がグリッド環境でたん白質複合体構造解析

中電CTIおよび日本IBMと実証研究、47日間の計算を10時間に短縮

 2005.11.02−中部電力は10月31日、情報技術(IT)子会社の中電シーティーアイ(中電CTI、八木達雄社長)および日本IBMと共同で、パソコンの余剰能力を活用するグリッドコンピューティングシステムを構築したと発表した。技術開発本部の200台のパソコンをネットワークに参加させ、1台のパソコンで47日間かかっていたたん白質構造解析のシミュレーションを10時間に短縮することに成功した。さらに実証実験を進め、最終的にはグリッドを応用した新しいビジネスモデルの創造を目指していく。

 今回のプロジェクトでは、半年間にわたって検証を行った。具体的に使用したのは、中電CTIが開発したたん白質複合体構造予測システム「GreenPepper」。これは、たん白質分子間の相互作用を取り入れたシミュレーションにより、2個のたん白質分子がどのような形状で複合体を形成するかを予測するソフト。膨大な計算時間が必要になることがネックだったが、グリッドコンピューティングによって大幅な高速化が可能になることが確かめられた。

 とくに、今回の検証を通して、時間帯別のパソコンの起動状況や、いつの時点でどのくらいの余剰能力が生じているのかということを数量的にとらえることができたという。また、グリッドを通じて投入されたジョブは個々のパソコン上で最も低い優先順位で実行されるため、業務使用中にジョブが実行されていてもパソコン利用に不都合が生じたり業務が妨げられたりしないことも確認できた。

 今後は他のアプリケーションでも適用検証を進め、年内には原子炉炉心解析(原子力発電の燃料を安全に効率良く燃やすための燃料配置の解析)の高精度化を目的とした新しいプロジェクトをスタートさせる。

 さらには、複数拠点間のパソコンを連携させ、より大規模なグリッド環境での検証を行い、中部電力の全社1万7,000台のパソコンでの展開を目指す。

 なお、中電CTIはバイオインフォマティクス事業(http://www.cti.co.jp/service/life/bio.html)を推進しており、システムインテグレーション(SI)、受託解析、ソフト開発など幅広いサービスを提供している。