分子機能研究所が創薬支援ソフトを独自開発

HyperChemにたん白質解析機能、再現性高い論理的ホモロジーモデリング

 2005.10.27−分子機能研究所(埼玉県三郷市、辻一徳代表)は、加ハイパーキューブ社の汎用分子モデリングシステム「HyperChem」にたん白質解析機能などを追加し、創薬研究に役立つようにする拡張ソフトウエアを独自で開発、「ホモロジーモデリング・フォア・HyperChem」の名称で製品化した。10月には、ハイパーキューブの販売子会社であるサイバーケム社と提携して海外での販売もスタート。研究者の立場に立った使いやすさと低価格を武器に広範な普及を目指す。

 開発者の辻代表は東京大学大学院などで学んだ有機合成化学者/理論化学者で、学生時代からのHyperChemのヘビーユーザー。専用スクリプト言語を使った開発ツールにも精通しており、その知識を用いて今回の製品を開発した。

 HyperChem自体は、低分子化合物を主な対象としたモデリングソフトだが、創薬研究に利用するためにはたん白質が扱えるべきだという観点から開発に乗り出したもの。ホモロジーモデリング法によってターゲットたん白質の立体構造を組み立て、シミュレーションを行うまでの過程を一貫して支援できる。

 とくに、モデリングや解析の手順が標準化され、再現性の高い論理的な研究を可能にしたことが最大の特徴。すべてがGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)ベースで、自動化もなされているため、テキストファイルを開いてパラメーターを直接編集するなどの面倒で複雑な操作をする必要がない。このため、研究者は本質的な思考に集中することができる。

 立体構造をモデリングする際の参照たん白質となるPDB(プロテインデータバンク)データには、そのたん白質と共有結合している低分子をはじめ、金属原子や水なども含まれてしまっているが、今回のソフトを使えばそれらを簡単に選択して個別に操作の対象とすることが可能。

 この機能を利用したQM/MM(量子力学/分子力学)ハイブリッド解析も容易で、共有結合しているリガンドを切り出したあと、内蔵されているGaussianインターフェースを介してリガンドに対する分子軌道計算を実行し、座標や電荷などの計算結果をHyperChemにフィードバックさせることができる。これによって、精密な相互作用解析が可能になる。

 また、たん白質分子を分子動力学シミュレーションするために、通常はパラメーターをテキスト編集して入力しなければならない束縛条件に関しても、GUIで一気に設定することが可能。このほかにもさまざまな機能があるが、基本的に自身が研究者として必要とする項目をすべて盛り込んだということだ。

 HyperChemのバージョン5以降(最新版はバージョン7)に対応しており、ほとんどの操作は付属のコントロールセンターから行える。価格は一般38万円、大学19万円、学生9万5,000円。GaussianはGaussian98WまたはGaussian03Wをサポートしている。ホームページ(http://www.molfunction.com/jp/)から注文を受けつけているが、ソフトの販売だけでなく、実際の研究テーマに即したサイエンティフィックコンサルティングも提供していく。

 なお、年内の発売を目指して、ターゲットたん白質の構造を決定したあと、医薬候補化合物とのドッキングシミュレーションを行うための支援システム「ドッキングスタディ・ウィズ・HyperChem」を開発中。独自の革新的な手法が導入されることになるという。これにより、創薬支援システムとしての機能性が格段に向上するとみられ、今後が注目される。