マイクロソフトがウルトラモバイルPCを日本市場で発売

まずは教育市場を狙う、立命館小学校で試験導入開始

 2006.04.05−マイクロソフトは4日、ウルトラモバイルPC(UMPC)の日本における事業戦略を発表した。タブレットPCでマーケティングを進めてきた教育市場や企業向け特定用途端末などの分野に対して新たな提案を行っていく。とりわけ、ペン操作やデジタルインクなどの技術が高く評価されている教育市場への展開に力を入れる方針で、小学館や学習研究社などと専門のパートナー関係を結んだ。ハードウエアの第1弾はPBJ(本社・東京都新宿区、高橋正敏社長)から提供されることになり、立命館小学校への導入が決まっている。

 UMPCは、コード名“オリガミ”として開発された3月の独CeBIT展で発表された製品で、タッチパネル付きの7インチスクリーン(最低解像度800×480ドット)を備えた携帯型パソコン。重さ900グラム以下、バッテリー駆動時間2.5時間以上というスペックで、CPU(中央処理装置)としてはインテルのセレロンMまたはペンティアムM、VIAテクノロジーズのC7-Mが指定されている。フル機能のWindowsXPタブレットPCエディションを搭載しており、通常のパソコンとハード・ソフトの互換性があることが特徴。

 ソフトウエア面では、「タッチパック」と呼ばれるツールセットが提供され、タッチ操作でソフトを起動できる専用ランチャーが組み込まれている。アプリケーションをグループ化して登録しておくことができ、カスタマイズも自由に行える。また、画面の両脇に出現する「ダイヤルキーボード」によってマシンを両手で持ったまま親指だけで文章を入力することも可能である。タッチしやすいようにボタンやアイコンが大きく、スクロールバーなども太く表示させることができるようになっている。

 米マイクロソフトのWindowsモバイルプラットホーム事業担当のビル・ミッチェル副社長は、「携帯可能なフォームファクターをWindowsフル装備で提供するのが理想だった。これまでは、携帯型のハードウエアではCPUや消費電力の制限があって、WindowsCEなどを出さざるをえなかったという経緯がある。今回のUMPCはかなりの理想型だ。ひょっとすると、携帯型ゲーム機としてもいけるかもしれない。もっと使いやすく、携帯電話のように簡単にしたいと思うが、携帯電話というフォームファクターに取って代わるつもりはない。いずれにしても、日本市場はモバイルデバイスの革新を牽引してきた市場であり、この製品も日本で成功することが不可欠だと考えている」と話す。

 日本では、とくに教育分野を最初のターゲットとし、この分野を専門に展開するパートナーとして、IEインスティテュート、アドバンスト・メディア、アルク、学習研究社、小学館、日本漢字能力検定協会とアライアンスを結んだ。これら各社からさまざまなソフトやコンテンツが提供される予定。例えば、小学館が5月からモニター開始し、9月からサービスインを予定しているサービスが「電脳陰山メソッド」。立命館大学・大学教育開発支援センターの陰山英男教授(立命館小学校副校長)と共同開発したもので、「漢字」と「算数」から順次コンテンツをリリースしていく。

 陰山教授らの研究によると、タブレットPCのタッチペン方式での反復漢字学習によって子供の知能指数(IQ)レベルが急上昇するという結果が出ているという。陰山教授によると、漢字は日本人としての知識の中核であり、「漢字を学ぶことは学習能力向上の要。とりわけ、徹底的な反復が重要だが、そういうのはパソコンが最も得意とすることであり、またペン入力を使うことによって脳が刺激される。教材を紙からデジタルへと代え、インターネット環境も生かしつつ新しい時代の効果的な学習法を探っていきたい」(陰山教授)とした。

 創設されたばかりの立命館小学校では、今回のUMPC(全部で33台)を3年生1クラスの児童全員に1台ずつ与え、自宅に持ち帰れるようにして学習意欲や効率にどのように影響するかの実証実験を行う。将来的には全校導入を視野に入れ、小学6年生までに習う漢字を4年生までに修了させる“前倒し学習”を実施する目標を立てている。

 一方、PBJが開発した製品は「スマートキャディ」という名称で、価格は9万9,800円。CPUにVIAのC7-M(1GHz)、ビデオ機能にVIA VN800内蔵「ユニクロームプロ」グラフィックスを採用。512MBのメモリーと40GBハードディスクを内蔵している。本体サイズは228×146×25.1ミリメートルで、重さは約880グラム。4日からエキサイト、ソースネクスト、ノジマのウェブショップで予約受付を開始した。出荷は14日からの予定で、それ以降はノジマの店頭でも販売する。その他、ビジネス向けでは特定分野にノウハウを持つエスアイエス、日本テクト、日立情報システムズ、菱洋エレクトロなどと代理店契約を結んだ。初年度10万台の販売を見込んでいる