NECがロボットの動作を再現するエージェントソフトを開発

ロボットをPDAに転送して携帯、機器の制御など組み込み用途にも展開へ

 2006.05.10−NECは9日、パーソナルロボット「PaPeRo」の振る舞いを記述したシナリオプログラムを、実際のロボットがなくても起動・再現できるエージェントソフトウエアを開発したと発表した。専用開発環境の「RoboStudio」(ロボスタジオ)に組み込み、作成したシナリオの動作検証をパソコン上のCG(コンピューターグラフィックス)を使って行うことが可能。ロボット用プログラムの開発効率が高まる。また、今回のエージェントはPDA(携帯情報端末)などのモバイルデバイスでも動作させられるという特徴があるため、同社では今後さまざまな用途の可能性を探っていくことにしている。

 今回開発したエージェントは、実機のPaPeRoとほぼ同じ機能を再現でき、CGで動きを表現したり、音声で利用者と会話したりすることができる。

 最大の特徴は、PaPeRoを動かすシナリオプログラムが、実機を離れてパソコンやPDAなどに転送できること。これにより、家の中でレストランの情報をPaPeRoに探させ、今度はPaPeRoをカーナビに転送して現地までの案内をさせ、最後にPaPeRoをPDAに移して店内に持ち込み、おすすめ料理などの情報をさらに検索させるといった使い方が可能になる。

 利用者の趣味・興味・スケジュールに関連した会話履歴などのPaPeRoの“記憶”が常に保持されているので、それぞれの利用者に合わせた気の利いたサービスが提供できるという。

 基本的に、1台のPaPeRoがさまざまにボディに乗り移るという設定になるため、PDAなどに入れて持ち出している時は、家にある実機は動作を停止する。これは、PaPeRoがいわば分身して同時に稼働してしまうと、会話履歴などのデータの整合性が取れなくなるため。将来的には解決させたいとしている。

 技術的には、無線LANを介して、対話履歴データおよびシナリオデータの両方をXMLでまとめてエージェント間で転送する技術がポイントになっている。また、パソコンでは音声会話、PDAではテキストベースで対話するなど、エージェントが稼働するデバイスの特性に合わせた動作を自動的に選択する“シナリオ汎用化技術”を搭載した。

 同社ではさらに、さまざまな組み込み用途への展開も計画している。情報キオスク端末のキャラクターに利用するなどの単純な用途だけでなく、ロボットプログラミングのシナリオ化機能を生かして、各種機械装置の制御・動作をインテリジェント化することに役立てていく。また、CGキャラクターを出して、操作をわかりやすくガイドすることなども考えられるという。組み込み用途を推進するため、Linuxへの移植も実現している。

 今回の技術の正式な製品化の時期および価格は未定だが、実機の動作検証用に「RoboStudio」に組み込むCGエージェントは技術的にもかなり安定しているため、要望があれば半年以内に提供可能だという。