SAPジャパンがオンデマンド型CRMサービスへ参入

四半期ごとに機能強化、プロセス連携中心にインハウス版への移行も推進

 2006.04.27−SAPジャパンは25日、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)アプリケーションをインターネット経由のサービスとして提供する「SAP CRM On-Demand」を日本でスタートさせると発表した。インハウス型パッケージの「mySAP CRM」の機能性をそのまま引き継いでおり、台頭が目立つオンデマンドサービス市場に本格参入する。ただ、インハウス版への将来的な移行を考慮したサービスとなっていることが他社との違い。対象も500ユーザー以上の大手・中堅企業に絞っており、オンデマンド版で市場に切り込みつつ、インハウス版の導入に結びつけることが隠れた狙いともいえそう。

 今回の「CRMオンデマンド」は、欧米では2月からリリースされているもの。まずは、顧客管理や商談管理などの営業支援(SFA)機能を実装しており、以後は四半期ごとにバージョンアップを行う。年内にはマーケティングや保守サービス分野、コンタクトセンターなどの機能を追加する。

 同社が“分離テナント型”と称するビジネスモデルを採用しており、アプリケーションの運用は新会社のSAPホスティングが、サーバーの運用はIBMが行う。利用料金は月額1ユーザー8,400円から(フルコンポーネント使用のエンタープライズユーザーで月額1万4,000円)で、初年度10社との契約を見込んでいる。

 同社の説明によると、独立性の高いCRM業務にはオンデマンド型サービスが適しているが、他の業務システムとのプロセス間連携が増えてくると、インハウス型パッケージの方が有利になるという。オンデマンド版でもEAI(企業アプリケーション統合)ツールを使ってプロセス間連携を実現することはできるが、連携するプロセスが多くなり、外部からバッチジョブが大量に流れ込んだりすると、性能や可用性に深刻な影響が生じる恐れがある。

 そのため、インハウス版に切り替えようとしても、他社のオンデマンド型サービスではシステムを一から導入し直すことになってしまう。同社の場合は、オンデマンド版とインハウス版で同じデータモデル、同じパラメーターを採用しているため、スムーズな移行が可能だというわけ。「プロセス連携をするかしないかで正しい選択をしてほしい」(三村真宗ストラテジックソリューション営業本部長)とした。将来的にも、インハウス版とオンデマンド版の比率は9対1ぐらいにとどまるとみているという。

 また、「シンプルであり続けることが最も重要だと思っている。他社がやっているようなオンデマンド版の恐竜的進化は絶対にしない」(同)などと述べ、セールスフォース・ドットコムのようなオンデマンド型ベンダーの動きを牽制した。