エルエイシステムズ:岡田孝夫社長インタビュー

RIBMの100%子会社として再出発、両輪そろえグループ化戦略推進

 2006.08.19−NMR(核磁気共鳴)などの実験装置との連携で独自のノウハウを発揮するコンピューターケミストリーシステム(CCS)ベンダー、エルエイシステムズ(LAS)が、このほど生体分子計測研究所(RIBM)の傘下で再出発した。今後はそれぞれの強みを伸ばしつつ、グループとしての一体化した戦略を推進していく考え。新しく社長に就任した岡田孝夫氏(RIBM社長も兼務)にこれまでの経緯と今後の方針を聞いた。

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 − 今回の統合の経緯を教えてください。

 「LASの創業者だった阿久津政明社長が昨年10月に亡くなられたことを受け、事業を継承するために今年6月にLASをRIBMの100%子会社にした。われわれのようなベンチャーはこれからは単独でやっていくのではなく、他のベンチャーと集合・連携・融合を図ることが重要だと考えており、今回のこともそうした方針に沿ったグループ化戦略の一環と位置づけている。ただ、これまでのLASの実績・知名度を生かしたいので、当面は独立した組織として活動させる」

 − LASの製品、サービスについて紹介してください。

 「NMR関連のデータ解析ソフト、データベースなど、内外のユニークなソフトウエアを扱っている。実験・計測分野のソフトウエアスイートであるACD製品、たん白質構造予測ソフトCYANAも評価が高い。生命科学の研究室向けの高速計算機環境構築サービスなどでも実績が豊富。今回は社員もすべて引き継いでいるので、サポート面などで既存ユーザーに迷惑をかけることはないと思う」

 − LASとRIBMのシナジーについてはどう考えていますか。

 「LASのソフトとRIBMのハードで、両輪がそろった強みを発揮できるようにしたい。RIBMは生体分子を計測するためのマルチプローブ走査型顕微鏡などを製作・販売しており、LASとは共通のユーザーが多い。今後、RIBMのハードに関連したソフト製品を増やしたり、RIBMとの統合ソリューションを構築したりすることを通して、事業面でのシナジーが高まってくると考えている」

 − 統合ソリューションとしては、どんなものが考えられますか。

 「いくつかのアイデアがある。例えば、RIBMでは、ナノバイオ関連技術を生かして、食品検査サービス事業を開始している。食品中に遺伝子組み換え作物や特定のアレルギー物質が含まれているかどうかなどを測定するもので、分析項目やメニューを増やしていくことを考えているが、そうしたなかでLASのソフト技術が利用できる」

 − 当面のLASの事業課題について教えてください。

 「LASに対しては、必要に応じて経営資源を積極的に投じていくが、まずは営業体制の再構築が重要。以前の阿久津社長が亡くなってから、やはりある程度活動が低調になっていたので、本社を都内に移して環境を一新し、あらためて既存製品を伸ばすとともに、新製品の発掘に力を入れる。ナノバイオ分野の研究の動きを踏まえて、新しい分野のソフトにも取り組みたい。また、将来のことを考えると、LASとRIBMの異なる企業文化をいかにスムーズに融合させるかも課題になるだろう」

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 岡田社長は、オリンパス光学工業の出身。旧通産省工業技術院(現在の産業技術総合研究所)アトムテクノロジー研究体によって行なわれた「原子・分子極限操作技術」プロジェクトに参加したのち、旧工技院第1号ベンチャーとして1999年にRIBMを設立した。岡田社長としては、LASの売り上げ規模をピーク時に回復させた時点で、RIBMと合併あるいは経営統合を行い、株式公開へというシナリオを描いているようだ。