マイクロソフトがWindowsCCSを正式に製品発表

10月から日本語版提供開始、高い管理性武器にTCO削減

 2006.08.28−マイクロソフトは24日、同社が初めてハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)市場に進出するための戦略商品「Windowsコンピュートクラスターサーバー2003」(WindowsCCS)を正式に発表した。Linuxをベースにしたクラスターシステムと競合する製品で、システム構築や運用管理、ユーザーにとっての使い勝手などに優れているため、TCO(総所有コスト)で大きな優位性があるという。出荷開始は10月2日からで、ライセンス価格は9万200円(アカデミック1万3,500円)。

 WindowsCCSは、64ビット専用Windowsサーバー2003をベースに、クラスターシステムのためのリソース管理ツールやジョブスケジューラーなどの各種専用ツールを組み込んだ製品。Windowsサーバー2003が稼働中の環境に導入することができるほか、現時点で11社のハードウエアパートナーからこれをプリインストールした専用システムが10月から順次発売される。

 具体的なハードベンダーは、HPCシステムズ、サン・マイクロシステムズ、タヤン、デル、ビジュアルテクノロジー、日立製作所、NEC、日本IBM、日本コンピューティングシステム、日本ヒューレット・パッカード、富士通の11社となる。

 一方、対応アプリケーションに関しては、アライドエンジニアリグ、アンシス(統合シミュレーションソフトウエアの流体解析ソフトANSYS CFX)、イマジオム、インテル、ヴァイナス(反復法連立一次方程式ソルバーSuper Matrix Solver - AMG)、ウルフラムリサーチアジア(WindowsCCSで数学ソフトgridMathematicaを簡単に使用するためのクラスターインテグレーションパッケージ)、エムエスシーソフトウェア、サイバネットシステム、ソフトウェアクレイドル、フルーエント・アジアパシフィック、リヴィールラボラトリ(東京大学などが開発した国産プロセッサーGREPEを搭載したCOSMOBOX)−の11社が提供を行う。(カッコ内の説明は同時発表で出されたプレスリリースによる)

 このほか、システム構築を請け負うシステムインテグレーターや関連ハードウエアベンダーとして、アイ・ティ・オーシステムズ、インテル、HPCシステムズ、NECフィールディング、サン・マイクロシステムズ、シスコシステムズ、住商情報システム、デル、電通国際情報サービス、トーメンサイバービジネス、ビジュアルテクノロジー、NEC、日本IBM、日本エイ・エム・ディ、日本コンピューティングシステム、日本ヒューレット・パッカード、ファウンドリーネットワークスジャパン、富士通、ベストシステムズ−が名を連ねており、全部で31社のパートナーと共同でビジネスを展開していく。

 WindowsCCSの最大の特徴は、システム構築や運用管理の容易さ。OSをセットアップすると、画面に「作業リスト」が表示され、ここからクラスターの構成を決める「ネットワーキング」、計算ノードを自動的に設定する「リモートインストールサービス」(RIS)、RISなどを使わずに行う「ノード管理」、エンドユーザーを登録する「ユーザー管理」−といったメニューにアクセスできる。

 「ネットワーキング」で選べる作業は、「クラスターネットワークトポロジーの構成」と「Windowsファイアーウォールの設定の管理」、「リモートインストールサービス」からは「RISのインストール」と「RISのアンインストール」と「イメージの管理」、「ノード管理」からは「ノードの追加」と「ノードの削除」、「ユーザー管理」からは「クラスターユーザーと管理者の管理」となっており、すべてウィザード形式でわかりやすく使いやすい。

 例えば、複雑なネットワークのトポロジーも、構成例の図を参照しながらドロップダウンリストから選択するだけ。ユーザーの追加も、アクティブディレクトリーと連携しているため、ユーザー名を記述するだけで自動的に認識・設定される。エンドユーザーにとっても使いやすく、GUI環境で簡単にジョブ投入を行うことができるほか、コマンドラインからも操作することが可能。

 開発環境としては、開発者が慣れ親しんだマイクロソフトのビジュアルスタジオを使用できる。並列アプリケーション開発の高い生産性を提供できるという。

 ところで、HPCシステムとしてのLinuxクラスターとの性能面での比較だが、WindowsCCSもハードウエアはインテルまたはAMDがベースであり、Linuxクラスターと同種のものとなるため、性能面での差はあまりないようだ。「正直なところ、Linuxに匹敵する性能を保つことが目標だった」(米マイクロソフトHPC担当ディレクターのキリル・ファエノフ氏)という。性能よりも、使いやすさ/管理のしやすさ/開発のしやすさに重点が置かれており、これによりHPCを身近な存在にすることが同社の主な狙いとなっている。

 なお、今回のWindowsCCSは、早期導入ユーザーとして、同志社大学、東京工業大学、川崎重工業、ティージー情報ネットワーク(東京ガスグループ)の4サイトですでに稼働中である。