分子機能研究所がドッキング解析ツールのマルチ化合物対応版

最大1万化合物を自動的に解析、高精度計算を実現

 2006.11.21−分子機能研究所(埼玉県三郷市、辻一徳代表)は、医薬候補化合物と標的たん白質とのドッキングシミュレーションツール「Docking Study with HyperChem」(ドッキングスタディ・ウィズ・ハイパーケム)のマルチ化合物対応版を開発、販売を開始した。100個、1,000個などの候補化合物群をまとめて自動的にドッキング解析にかけることが可能で、創薬研究のスピードアップに貢献できる。また、個別にコンサルタント契約を結ぶかたちで、PCクラスターを利用した高速バーチャルスクリーニングの要望にもこたえていく。

 今回の製品は、加ハイパーキューブの汎用分子モデリングソフト「HyperChem」を基盤にした製品だが、ほとんどの操作は独自のGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)環境で行うことができ、現場の研究者にも使いやすいことが特徴。

 今年の春から単一化合物版を販売してきたが、要望の大きかったマルチ化合物に対応させ、フルラインアップを整えた。各バージョンと価格は、単一化合物版が年間使用ライセンス50万円(同アカデミック30万円)、10化合物版が同75万円(同45万円)、100化合物版が100万円(同60万円)、1,000化合物版が250万円(同150万円)、1万化合物版が500万円(同300万円)。いずれも、初期導入費用として150万円(同100万円)が必要。

 解析したい化合物群の二次元構造ファイルを用意しておけば、三次元構造を自動的に立ち上げて、バッチファイルを作成してくれる。このバッチファイルを読み込むことで、標的たん白質に対するドッキング解析が自動的に行われる。とくに、化合物のコンホメーションを変えるたびに半経験的方法による一点計算を行い、電荷を与え直してドッキングさせていく方法をとる。電子の再配置を考慮できるため、非常に高い精度を引き出すことが可能。

 分子量や特定の構成原子、環構造の数など、フィルターを設定してドラッグライクではない条件の化合物を計算から除外することによって、計算時間を短縮することもできる。解析のためのパラメーター群はユーザーがきめ細かく調整することが可能で、精度重視から速度重視までチューニングする範囲は自由にコントロールできる。トーションが20もあるような通常のドッキング解析にはかけられないような化合物でも扱うことができるという。

 また、解析結果を可視化する「ドックビューワー」機能も使い勝手が良く、解析した分子をたん白質の構造に重ね合わせて、多様な表示形式を使い分けながら閲覧していくことができる。画像をエクスポートすれば、研究発表や論文作成の資料としてそのまま利用することが可能。

 今回のパッケージはいずれもパソコン単体で使用可能だが、同社ではPCクラスターで動作するバージョンも開発している。精度を重視すると計算時間が長くなるが、クラスターで分散処理することにより、大量の化合物でもバーチャルスクリーニングにかけることが可能。ただ、このクラスター対応版は製品化されておらず、個別コンサルティング契約を結ぶことによって使用可能となっている。

 なお、たん白質の結合部位を探索するため、特許申請中の独自技術である「PIEFII」を採用していることも大きな特徴といえる。