モデリング技術をプラント現場の技術継承問題の解決策に

プロセスシミュレーションベンダーが提案、基本原理からの技術者教育も

 2007.03.23−2007年問題などもあり、プラント現場でのベテランオペレーターやエンジニアの技術・技能の継承に大きな注目が集まっている。こうしたニーズを受け、モデリング技術を解決策にしようと、プロセスシミュレーションベンダーが提案活動を展開しはじめた。とくに、ブラックボックスとしてのプロセスモデルではなく、モデル化の基本原理をしっかり理解したうえでの技術者教育の重要性が認識されつつあり、外資系最大手のアスペンテックジャパンや、新進の国内ベンダーであるpreFEEDなどが、サービスやツールの提供に乗り出している。

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 国内の化学産業がバルク的な石油化学プロセスを主流としていた時代は、欧米から技術導入したり教科書的なモデルを利用したりすることができたため、ほとんどの場合は基本的なモデルが組み込まれた汎用プロセスシミュレーターを使用することで、プロセスの基本設計や改善検討などを行うことができた。

 しかし、ファイン・スペシャリティ戦略の進展にともなって、自社での研究開発が重視されるなか、極性の高い物質や複雑な反応操作、教科書にないような単位操作が増え、自分で独自のプロセスモデルを組み立てるスキルが求められるようになってきた。

 このため、プロセスの基本原理に沿った基本的で深い理解が必要であるとともに、それをモデル化して共有したり継承したりできるようにすることが、2007年問題との関連からも重要だというのがベンダー各社の提案である。

アスペンテック:エクセルでオペレータートレーニング
 業界トップのアスペンテックジャパンは、「Aspen Custom Modeler」(アスペンカスタムモデラー、ACM)と「Aspen Simulation Workbook」(アスペンシミュレーションワークブック、ASW)の組み合わせを提唱。ASWはエクセルをユーザーインターフェースとしてプロセスシミュレーションを行うためのツールで、今回のバージョンアップによってACMで構築したダイナミックモデルが組み込めるようになった。

 モデルそのものにプロセスの深いノウハウが反映されるとともに、エクセル上で温度・圧力などを変化させてその影響をシミュレーションすることが可能。操作条件の変更に対するプロセスの挙動がリアルに認識できるので、オペレーターに対する運転ノウハウの伝授や訓練に役立つ。

preFEED:技術者教育に力
 一方の国産勢では、preFEEDがオメガシミュレーションと提携して方程式ベースのモデリングソフト「EQUATRAN」(イコートラン)を提供するとともに、モデリングの基本から応用までの技術者教育ビジネスに力を入れている。自分でしっかりと数式を立て、複雑なプロセスをモデル化できるスキルを身につけることがポイントであり、そのためのベンチマーキング手法を取り入れるなど、さまざまなカリキュラムを用意している。

各種モデリングツールの位置づけ


資料:preFEED

  長所 短所
プロセスシミュレーター 単位操作モデル、物性データと推算法は組み込まれているので、ユーザーは対象となる物質と物性推算法を選び、計算のパラメーター(蒸留塔の段数など)を入力するだけで高度な計算が可能になる 組み込まれているモデルの修正、新しいモデルの組み込みは簡単にはできない。対象プロセスは、気液連続プロセスである石油精製と石油化学が中心
表計算ソフト データの表化、グラフ化が極めて容易。少ない変数の代数方程式の解法も可能。BASICルーチンと組み合わせることで、複雑な計算でも決まりきったものならば可能 実験データの相関式の作成はフレキシブルに可能だが、プロセスモデリングのように変数が多くなると計算が困難。モデルの内容は他の人には極めてわかりにくい
プログラミング言語(BASIC、FORTRAN) 複雑な計算手順も正確に実施することが可能で、繰り返し性の高い大きなプログラミング向き 式の変形、収束計算の部分が手間がかかり、他の人が見ても内容はわかりにくい。研究開発を行う研究者・技術者の日常のツールではない
方程式解法ソフト 基礎式を入力するだけで、式の変形と収束計算は自動的にソフトウエアが行うので、技術者はモデリングに集中できる。基礎式の入力形式が通常の数式に近いため、他の人が見てもどのようなモデルかがわかりやすい。プロセス開発段階のようにさまざまな反応形式、単位操作を検討する場合に適している 基礎式を自分で立てる必要があるので、物理化学、物性推算、化学工学、応用数学等の基本的な知識を身につけていることが必要