アクセルリスがQM/MMハイブリッド計算ツール「QMERA」

ナノテクコンソーシアムの開発成果として提供、コンソーシアム第2期へ弾み

 2007.07.19−アクセルリスは、ナノ材料開発を支援する先端コンピューターケミストリーシステム(CCS)の実用化を目指した「ナノテクノロジーコンソーシアム」の成果として、新しい計算ソリューションである「QMERA」を開発、今月からリリースすると発表した。材料設計統合システム「Materials Studio」(マテリアルスタジオ)の最新版4.2で利用できる新モジュールとして、コンソーシアムメンバーに対して提供する。量子力学と分子力学のハイブリッド計算を行うことができ、活性部位における触媒反応などを電子的に考慮することができる。今後立ち上げる第2期コンソーシアムへの弾みとしたい考え。

 ナノテクノロジーコンソーシアムは、2004年7月にスタートしたもので、第1期の活動はすでに終了している。今回のQMERAはその最終成果の一部として提供された。メンバーを募って資金を得て開発する一種のマルチクライアントプロジェクトで、最終的にはメンバーは29社(機関)と、かなりの数が集まったことからも、ナノテク分野のCCS開発に関するユーザーの関心が高かったことがうかがえる。

 今回、新たに4つのメンバーが参加したことが公表され、その中にデンソーが含まれていることが明らかにされた。これにより、公開メンバーは米コーニング、独IFAM(Fraunhofer-Institut fur Fertigungstechnik und Angewandte Materialforschung)、独IZM(Fraunhofer Institute for Reliability and Microintegration)、米ローレンスバークレー国立研究所、英インペリアルカレッジ、北陸先端科学技術大学院大学、英ジョンソンマッセイ、京都大学、米ミレニアムケミカル、米PPGインダストリーズ、米スケネクタディインターナショナル、トリニティカレッジ(アイルランド)、リンポポ大学(南アフリカ)、ウプサラ大学(スウェーデン)となる。新しい4メンバーにはタイ国立ナノテクノロジーセンターも入っている。このほかに、日本企業が2社加入している。

 さて、ナノテクノロジーコンソーシアムは、マルチスケールでのナノ材料モデリングを目指しており、量子レベルから、分子レベル、メゾスケール、バルクスケールまでの時間・空間領域をいくつかに分割し、それぞれに適した計算エンジンを開発して組み合わせるというアプローチを取っている。例えば、量子力学エンジンとしては、DMol3、CASTEP、VAMP、ONETEP、原子・分子スケールを扱うForciteプラス、GULP、Discover、Blends、AC、粒度の粗いメゾスケールエンジンとしてのCG Forciteプラス、メゾスケール専門のDPD、MesoDyn、MesoTek、メゾスケールからバルクスケールへの橋渡しとしてMesoProp、Palmyra、Synthia、QSAR、Reflex−が用意されている。

 新ツールであるQMERAは、量子力学と分子力学とのハイブリッド計算手法を提供するもので、大きな分子の系の重要な部分だけを量子力学的に解析するなどの用途で利用できる。量子力学で電子状態がわかるため、例えば触媒分子の反応に関係する部位の特性を調べるといったことが可能。具体的には、量子力学エンジンとしてDMol3とVAMP、分子力学エンジンとしてGULPとCHARMmを組み合わせることが可能。

 アクセルリスのナノテクノロジーコンソーシアムは、第2期へと継続されることが決まっており、第1期のまとめと第2期への提案を中心にしたウェブセミナー(http://www.accelrys.com/events/webinars/nanotech_phase2/)が公開されている。引き続き、どのような成果が送り出されるか、注目されるところだ。