米リアクション・デザインのモデル燃料コンソーシアムが最終年度へ

シミュレーション技術確立、次世代燃料・エンジン開発を支援

 2008.01.17−米リアクション・デザインが推進している「モデル燃料コンソーシアム」(MFC)が、今年から最終年度である3年目に入った。自動車燃料の化学反応を精密にシミュレーションすることにより、実験を減らしてエンジン設計の生産性を向上させることが狙いで、現在までにメンバー数も16に拡大。新しいソフトウエアも順調にリリースされている。3年目は新燃料への対応やシミュレーション技術の実証に力を入れる予定。開発成果は、来年6月以降順次、メンバー以外にも一般販売される。

 実際の自動車燃料は数千におよぶ化学成分から構成されるため、エンジン設計などの工学的なシミュレーションにおいて、燃料の種別や燃焼プロセスの挙動を考慮に入れることは現実問題として難しかった。

 MFCでは、実燃料の主要成分を1つか2つの分子であらわしたサロゲート成分として単純化し、それぞれの素反応モデルを開発。実燃料に対応する“モデル燃料”(サロゲート成分の混合物)として熱流体解析などに組み込む技術を確立した。これまでに、サロゲートデータベースの拡張と充実が図られ、実燃料を表現するためにサロゲートをどのように選択するかなどのノウハウも固められてきている。

 混合圧縮着火燃料方式(HCCI)のガソリンおよびディーゼルエンジン、それ以外のディーゼルエンジン開発、燃料設計などへの応用を目指しており、低温着火・着火遅れ、ノッキング性、熱放散、燃焼伝播、NOx排出・すす前駆物質の生成−などの予測に役立つ。

 具体的なソフトウエアツールとしては、これまでに反応経路アナライザー、オクタン価カリキュレーター、セタン価カリキュレーターなど5本のソフトが提供されてきているという。

 これらのソフトは、メンバー以外でも来年6月以降に順次購入が可能になるようだが、サロゲートデータベースについてはいまのところコンソーシアム終了後の2年間は外部への公開を控える方針となっている。

 世界では、地域によってさまざまなタイプの燃料が使用されており、グローバルな自動車メーカーにとってはエンジン設計を最適化するためにさまざまな燃料との組み合わせを膨大な実験で解析しているのが現状。また、環境問題との関連から次世代の自動車燃料に関する研究も活発化しつつある。その意味で、MFCは燃料とエンジンの両面からクリーンな燃焼を達成するアプローチとして注目されるだろう。

 なお、現在のメンバーは、シェブロン、コノコ・フィリップス、サウジアラムコ、ペトロブラス(ブラジル)、フランス王立石油研究所、オークリッジ国立研究所、ダウ・ケミカル、トヨタ自動車、日産自動車、三菱自動車工業、本田技術研究所、マツダ、PSAプジョー・シトロエン、フォード、ゼネラルモータース、エンジンメーカーのカミンズ−の16機関となっている。