2008年春CCS特集:アドバンスドテクノロジーインスティテュート

バイオインフォ教育組織NPO法人化へ、抗がん剤共同研究でも成果

 2008.08.30−アドバンスドテクノロジーインスティテュート(ATI)は、高度なバイオインフォマティクスのノウハウを生かし、受託研究・共同研究のスタイルで独自の事業活動を展開している。

 とくに、九州工業大学の皿井明倫教授らが構築・運営している「BioInfoBank」のサポートを通じ、同教授らと共同でアジア地域のバイオインフォマティクス研究と教育を促進するための非営利組織「アジアバイオインフォマティクスリサーチ&エデュケーションネットワーク」(ABREN)を運営。インターネット経由でのeラーニング形式のワークショップ開催などの活動を行ってきた。

 現在、このABRENのNPO法人化を目指した具体的な作業に着手中。必要な発起人が揃い、企業の賛助会員も集まりはじめている。来年早くには正式な設立へこぎつけたいという。

 一方、聖マリアンナ医科大学外科学教室との共同による抗がん剤研究プロジェクトも着実に前進。同大学が開発した熱可逆性ハイドロゲル形成性高分子化合物(TGP)を培養担体に利用し、実際のがん患者から摘出したがん組織片を用いて抗がん剤感受性試験を行う方法を確立した。TGPは、生理的温度範囲内の変化のみで株化したがん細胞を包埋・回収(がん組織からがん細胞を分離)できるという特徴がある。

 研究では、この方法でTGP上にがん細胞球状凝集塊を形成し、抗がん剤「5-FU」と「CDDP」に浸漬した場合の遺伝子発現パターンを解析した。発現データは、12時間おきに1週間後まで時系列的に取得しており、この遺伝子発現量の変化を機能別に分類しつつ、耐性発現の有無を予測する手法の構築を目指している。

 いまのところ、発現した遺伝子機能は、細胞周期調整因子、アポトーシスおよび抗アポトーシス因子、転写因子、膜たん白合成因子、DNA修復因子、シャペロン因子、代謝関連因子、たん白分解因子、プロテインキナーゼなどが関係していることがわかっているという。