菱化システムが標的たん白質探索ソフト「MED-SuMo」発売

たん白質表面の物理化学的特性を用いて解析、機能アノテーションが可能

 2008.05.10−菱化システムは、仏MEDIT社(フランソワ・デルフォード社長)と代理店契約を結び、創薬のもととなるターゲットたん白質を探索するソフトウエア「MED-SuMo」を新製品として販売開始した。たん白質の分子表面を解析し、リガンド結合部位を絞り込んだり、表面構造の類似した他のたん白質をデータベースから検索したりするなど、ターゲットたん白質からのドラッグデザインを支援するユニークな機能を備えている。とくに、特許取得の独自アルゴリズムが特徴。同社では加CCGの分子モデリングソフト「MOE」と組み合わせて、総合的な創薬支援システムとしての提供にも力を入れる。

 MED-SuMoは、たん白質表面に露出した官能基の情報に基づいて、リガンド結合部位の予測や類似した活性部位を持つたん白質の探索、異なるたん白質の表面の類似性の評価などを行うシステム。従来のアミノ酸配列や主鎖構造に基づいたアプローチとは異なり、たん白質表面の水素結合や表面電荷、疎水性相互作用、芳香族などの官能基の物理化学的特性を利用することが最大のポイントとなる。

 たん白質表面の官能基のセットを用いて、そのたん白質の特徴を記述するわけだが、具体的には近接した官能基3個を選択してグループ化(3重項)し、キーとなる表面部分を3重項を結び合わせたグラフへとマッピングする。このグラフで記述されたたん白質表面が検索条件となって、専用のデータベースから類似の表面を持つたん白質を検索するという仕組み。

 データベースは、プロテインデータバンク(PDB)に登録されているすべての立体構造データを網羅しており、たん白質の表面全体およびリガンドとの結合部位表面を3重項グラフに変換した情報が収録されている。PDBの5万件の構造に対する検索でも、一般のパソコンで10分かからないほどの速さで処理できるという。この方法は、物理化学的特性の一致度と形状の類似度の両方を加味した検索ができるのが利点で、きわめて高精度に類似した表面構造を見つけ出すことができる。表面全体を検索条件にすれば、類似した部分構造を持つたん白質をすべて抽出できるので、たん白質の機能アノテーションに利用することが可能である。

 また、PDBデータにはリガンドとの複合体となったデータも数多いため、ヒットしたたん白質に結合しているリガンドを抜き出して比較・解析することにより、医薬分子の構造デザインの際の生物学的等価体置換に利用できる官能基の決定などに役立てることができる。ただ、MED-SuMo自体には低分子化合物を解析する機能はないため、MOEなどの外部システムと組み合わせることを推奨したいということだ。

 動作環境は、LinuxサーバーとWindowsクライアントの組み合わせ。価格はCPU当たりの年間指名ユーザーライセンスとなり、企業向けが1CPU/1ユーザーで459万9,000円、2CPU/1ユーザーで630万円、大学向けは同じ条件で229万9500円と315万円。