トムソン・ロイターがレギュラトリーサイエンス戦略を強化

専門性高いサービスを網羅、薬事規制情報提供から新薬申請支援まで

 2008.10.28−トムソン・ロイターは、製薬企業向け情報サービスの一環として、新薬の承認にいたる時間の遅れを解消する意味で注目されている“レギュラトリーサイエンス”に関連した戦略を強化する方針を打ち出した。世界最大級の科学技術情報ソリューションプロバイダーとしての高度な専門性を生かし、複数のサービスを組み合わせて多様なニーズに柔軟かつ包括的に応えられるようにしていく。

 レギュラトリーサイエンスは、さまざまな意味に理解される言葉だが、とくに薬事行政に関連して医薬品のライフサイクル、すなわち研究・開発・製造・製剤・前臨床・治験・審査承認・市販後安全対策・適正使用などの各段階において、当事者が適切な評価・調整を行うための科学的な裏づけを提供するものとして注目されているという。とくに、新薬の申請から承認までの時間短縮を図ることに結びついてくるようだ。

 トムソン・ロイターは、製薬企業向けの特許・学術情報などを広く提供しており、この9月には利用者らの要望に応えるかたちで「レギュラトリーサイエンス・シンポジウム」も開催した。

 今回、あらためてレギュラトリーサイエンス戦略の一環として取り組むのが、関連するサービス群のビジネス展開を国内でさらに強化すること。

 具体的には、まず「CMR」と呼ばれる会員制サービスがある。これは臨床開発の実際の情報を会員から集め、全体を分析して評価基準をまとめあげて、効率的な臨床開発を実現するためのカスタム化されたレポートを提供するもの。定期的にワークショップを開催し、会員企業の意見を直接集約し、トムソン側からのフィードバックを行うサービスも実施している。最近はアジアで治験を実施する例が増えているため、アジア地域での活動をますます強化する方針だという。

 次に薬事規制情報サービス「IDRAC」は、世界各国の薬事規制に関するニュースや解説記事をまとめたレポートで、国ごとに規制を比較対照できることが最大の特徴。米食品医薬品局(FDA)をはじめとする規制当局も採用するなど、デファクトスタンダード的な位置づけのサービスとなっている。

 来年には“IDRACノート”と呼ばれる機能が追加され、オリジナルの情報(PDF形式のドキュメント)にコメントやメモをつけて社内で共有することが可能になる。利用者層の広がりも期待される。

 また、実際に新薬申請を支援するソフトウエアとして「Liquent」を提供中。これは、薬事規制に準拠した報告書や申請書を短期間で確実に作成することを支援するシステムで、データの品質・正確性・完全性を高め、当局の厳格な基準を完全に満たすようにすることができる。

 オプションで、海外へ新薬申請するためのドキュメントの翻訳、申請書類の印刷・制作、あるいは海外企業に対するライセンシングなども代行するサービスも提供しているという。基本的にLiquentはユーザー側に導入して利用するソフトウエアパッケージだが、トムソン・ロイターではフルアウトソーシング方式でのサービスにも応じている。

 4つ目のサービスは「CIS」で、市販後調査にともなう医薬品安全性情報を提供する一種のコンサルティングサービス。文献検索から文献の抽出、索引付け、カスタム抄録の作成、文献コピーの提供、翻訳までを一連のプロセスで実施する。関連で、安全性管理業務の委託(厚生労働省認可)も行っている。

 そのほか、薬事規制に関するeラーニングサービス「ROL」も注目される。事例を通して、最新の規制に対応した新薬申請の方法を学習できるもの。米欧日の3極に加え、今後は中国を含めたアジア諸国の規制に対応するように拡張する計画もあるという。

 トムソン・ロイターでは、レギュラトリーサイエンスに関連してこのようなユニークなサービス群を用意しているが、それぞれを単独ではなく、総合力の強みを生かしていく考え。個々のユーザーの課題などを理解し、総合的な解決策を提案できるようにしていく。