マイクロソフトのTech・Ed 2009基調講演

俊敏性を持つ“Dynamic IT”実現へ、仮想化・クラウドとの統合が焦点

 2009.08.28−15回目を迎えるマイクロソフトの開発者コンファレンス「Tech・Ed 2009」が26日、横浜みなとみらいのパシフィコ横浜で開幕した。初日の午前中には「次世代のITの可能性がここにある」と題して基調講演が行われ、経済の変化に俊敏に対応できる“Dynamic IT”のコンセプトを具現化する新製品・新技術を紹介した。講演では、間もなく提供開始される「Windows7」、「Windowsサーバー2008 R2」、「Office 2010」にとくに焦点が当てられた。

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 基調講演の冒頭では、大場章弘・執行役デベロッパー&プラットフォーム統括本部長が登壇し、Tech・Edの15年間の意義を強調するとともに、ITに俊敏性を持たせるためにクラウドを活用したシステム構築が今後は重要になると訴えた。

 続いて、中川哲・コマーシャルWindows本部長がWindows7の機能を紹介した。とくに、パフォーマンスを披露するデモが行われ、2秒以内でスリープから復旧すること、ネットブックや数年前のパソコンでも軽快に動作することが示された。

 また、XP用のアプリケーションの互換性では、互換パッチが自動で適用されて不具合が解消するデモや、IE6用のウェブアプリケーションがIE8で動作しない場合に、仮想化技術を用いたXP互換モードを利用し、Windows7上でIE6を利用できるようにするなどのデモが行われた。

 さらに、ユーザーの多様なワークスタイルを支援するという意味で、アプリケーション仮想化製品「Microsoft Application Virtualization」(略称・App-V)のデモを実施。これは、「Microsoft Desktop Optimization Pack」に含まれるツールで、アプリケーションの動作環境を仮想化してパッケージングし、それをサーバーからクライアントPC側に配信して動作させるもの。アプリケーションはPCにインストールされないため、ユーザーIDとパスワードでログインすれば、出張先の海外支店のPCでも自分が普段使っているデスクトップ環境を呼び出すことが可能。通常は共存できないExcel2007とExcel2003を同時に使用することも可能だという。

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 五十嵐光喜・業務執行役員サーバープラットフォームビジネス本部長は、「Windowsサーバー2008 R2」を“Dynamic IT”を実現するデータセンターOSだと位置づけた。そのための要件として、物理と仮想の壁を越えた相互運用性を持つこと、現在のアプリケーション環境とクラウド環境をシームレスに統合できること、仮想やクラウドを含めた統合的なシステム管理ができること−の3点をあげた。

 デモンストレーションでは、まずは省電力が取り上げられた。CPU負荷の低いアイドリング状態で、Windowsサーバー2003が216ワットを示したのに対し、Windowsサーバー2008 R2は157ワットにとどまった。これは、アイドル時にCPUの周波数を低く制御する技術に加え、“コアパーキング”と呼ばれる低消費電力技術を採用したため。低負荷時に使っていないコアに通電しないことで電力を低く抑えている。この過程はダイナミックにコントロールされ、処理の負荷がかかると直ちに休眠していたコアが復帰する。全体として、一般的な稼働率の範囲で約20%の省電力化につながるという。

 一方、Hyper-VとVHDファイルを利用すれば、仮想マシンと物理マシンを区別せずにアプリケーションの展開を効率的に行えることが強調された。Hyper-V上でOSを含めた仮想マシンをパッケージ化してVHDファイルにすることにより、Windowsサーバー2008 R2のWindows展開サービスを利用して迅速な展開を行うことが可能。VHDファイルは、展開先が物理マシンでも仮想マシンでも同等に扱えるメリットがある。

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 最後に登壇したのは米マイクロソフトの沼本健コーポレートバイスプレジデント(Officeプロダクトマネジメントグループ)で、Office2010をはじめとする2010シリーズについて紹介した。とくに、共同作業における生産性向上を重視し、デバイスや場所の制限なしにオフィスソフトを活用できることが示された。

 Office2007でWordとExcelに搭載されたリボンユーザーインターフェースについて、これによってユーザーはソフトの機能を深く活用できるようになったとし、Office2010ではOutlookやPowerPointをはじめ、VisioやProjectでもリボンを導入する計画を明らかにした。

 また、デモの中では1億レコードの巨大データをExcelだけで簡単に解析し、ビジュアルなレポートを作成する様子をみせた。「1億行のデータを自在に扱えるだけでも画期的なことだが、シェアポイントサーバーのエクセルサービスを通じて共有できるようにするとさらにおもしろいことになる」と述べ、チームの生産性が大幅に向上するシナリオを披露した。オフィスドキュメントがブラウザーで参照できるため、携帯電話から書類の内容を確認するなど、共同作業の範囲が大きく広がるという。

スリープからの復帰

起動時間の短縮

ネットブックで快適動作

古いPCでも快適動作

XP用アプリの互換性

アウトルック2010デモ

エクセルで1億件のデータ

パワーポイント2010新機能