旭化成情報システムがSPARTANバージョン2

高速化、計算対象を拡大

 1992.06.29−旭化成情報システムは、分子軌道法に基づく分子シミュレーションシステム「SPARTAN」(商品名)を大幅に機能強化し、バージョン2としてこのほど新発売した。計算手法として、量子化学方程式を忠実に解くこれまでの非経験的方法に加え、実験などから得られたパラメーターを入れて計算を加速する半経験的方法を導入。周期率表の54番のゼノンまでの各元素が扱えるようになり、計算対象が拡大するとともに、実用性が増した。米国ウエーブファンクション社が開発したものだが、旭化成情報システムでは国内総代理店として普及活動に力を注ぐだけでなく、旭化成のソフトウエア開発研究所を通して開発面でも若干の協力を行っている。

 今年度については、景気後退の折からユーザーサイドの研究開発投資が低く抑えられるケースも見受けられる。しかし、SPARTANはソフト価格350万円の低価格が特徴であり、同社では研究予算の圧縮が逆に低価格システムへの需要を呼ぶと期待。簡単に分子の反応の予測などが行えることから、とくに実験化学者向けに売り込んでいく考えだ。

 SPARTANはもともとGAUSSIAN85と呼ばれていたシステムだが、ガウシアン社のGAUSSIAN90/92が計算化学のパワーユーザー向けに一層の高機能化を図っているのに対し、SPARTANはグラフィックに重点を置き、一般の有機化学者が合成実験を行う際のサポート役となることを主眼に開発されている。

 今回、実用性を重視した機能強化が施されており、分子構造を組み立てるビルダーではリガンド分子のクラスターモデリングや遷移状態の構造をつくる機能が追加された。また、自動的に結合軸を回転させて安定配座を探るコンフォーマーサーチ機能、静電ポテンシャルをまず計算してそこから電荷を求める“CHELP法”なども取り入れている。

 国内では旭化成情報システムの直販のほか、CRC総合研究所でも販売を行っており、シリコングラフィックス社のIRISワークステーションで利用できる。