R&D支援技術特集

菱化システム

 1998.05.25−菱化システムは、カナダ・ケミカルコンピューティンググループ(CCG)が開発した新発想の統合分子設計支援環境「MOE」の普及に力を注いでいる。商用ソフトとしては画期的なことに、すべてがソースコードで提供され、プログラムの中身を改造・変更することも自由に行える。しかも、完全なマルチプラットホームを実現しており、UNIXの並列処理環境からウィンドウズ、マッキントッシュまでまったく機種を選ばない。出来合いのソフトに飽きたらないユーザーや研究者を中心に、国内でも評価が高まってきている。

 MOEは、そのすべてのモジュールがCCG独自のプログラミング言語“SVL”で記述されている。これは、FORTRANなどに比べて約10倍の生産性を持つ高級言語で、ソースコードのまま起動するたびにコンパイルして実行させるという特徴がある。

 MOEを起動すると、まず一種のバーチャルマシンとなるベースモジュールがコンパイルされて読み込まれる。その上で、各サブモジュールもコールされるたびにソースからコンパイルして実行する仕組みである。普通に考えると動作が重くなりそうなアーキテクチャーだが、SVLでプログラム自体が非常にコンパクトに収まっているため、きわめて軽快に動く。

 現在、CCGからたん白質のモデリングや医薬品設計などのアプリケーションモジュールが豊富に提供されている。なかでも、ハイスループットスクリーニング(HTS)における活性の有無など、定量化しにくいサンプルからでも相関式を導くことのできる“バイナリーQSAR”機能などが注目されている。これらのSVLソースを改造してオリジナルのシステムを実現することが、やはりMOEの醍醐味だろう。