CCS特集・計算化学関連
ナノシミュレーション
1999.03.20−ナノシミュレーションは、分子動力学計算を専門とする特異なソフト会社で、独自のノウハウで開発した「NanoBox」を提供している。分子動力学法(MD)は学術的にも発展中の計算手法で、とくに材料分野への応用では力場のパラメーターづくりなど難しいポイントが多く、現状では使い手を選ぶ理論だともいえる。そこで、同社では単にプログラムの販売にとどまらず、学術レベルでのコンサルティングや技術サービスの提供も含めて、実用的なMDの応用展開を図っている。
NanoBoxは、開発者である桑島聖代表(理学博士)がCRC総合研究所時代に作成した「GEMS/MD」をベースに機能拡張を行ったプログラムで、当初より液晶やポリマー、界面などの問題に的を絞って実用化を進めてきた。とくに、分子レベルでの不均一性・組織性を内包するナノスケール構造の材料シミュレーションを得意としており、実用的な研究成果もあがりはじめている。
その一つが、物質工学工業技術研究所およびセイコーエプソン、富士ゼロックスなどとの共同研究による液晶分子配向のシミュレーションで、1997年3月に学会発表された。液晶相と高分子界面との1万2,000原子の系を2ナノ秒というタイムスパンで計算したものだ。
最近では、ドイツの液晶メーカーから受注するなど海外でも評価が高まり、事業としてもいよいよ軌道に乗りつつある。