科学者向けサイバーモール、eコマース時代へ布石

サイネックス:緒方昭一社長インタビュー

 1999.08.16−住商エレクトロニクスのインターネット関連事業の戦略子会社として新会社「サイネックス」が設立された。科学者・技術者を対象に、世界中の1,600社/6,500本にのぼる専門的なソフトウエアを提供するサイバーモール“ネットサイエンス”を運営していく。緒方昭一社長(住商エレクトロニクス専務を兼任)は、「インターネット時代にeコマースのノウハウを確立することは、グループとして21世紀にさらなる発展を遂げるためにも欠かせない要件だ。不特定多数の消費者を相手にしたショッピングモールはまだまだリスクが大きいが、ネットサイエンスはターゲットが明確であり、大手が簡単に入り込めないニッチなマーケットを対象にしているという意味で成功の確率は高いと確信している。将来的には、グループの柱となるような事業に育てたい」と話す。

  ◇  ◇  ◇

 ネットサイエンスは、もともと97年1月に不動産情報サービスなどのデジタルウェアが新事業としてはじめたサービス。世界中の技術系ソフトを集めて、技術者・研究者が自分の仕事に役立つソフトをみつけ出して簡単に購入できるようにするという基本的なコンセプトは現在も変わっていない。また、会員情報やアクセス履歴をもとにその会員個人向けにカスタマイズされたホームページを提示するワン・トゥー・ワン・マーケティングの考え方を採用している。いまではそれほど珍しくないが、当時からこうした最先端の技術を先取りしていた。

 「住商エレは、電子・情報技術の専門商社として来年25周年を迎えるが、販売スタイルは対面営業が中心であり、どちらかというと高額なハードや大口のシステム販売、インテグレーションのプロジェクト受注などが事業の基盤になっている。しかし、ソフトも低価格化が進んでいるおりから、対面営業では扱いきれない細かなハードやソフトをインターネットで販売できないかと検討をはじめていたときに、ネットサイエンスを知ることになった」と緒方社長。

 その後、98年11月にネットサイエンスをデジタルウェアから買収することになるが、本体とのビジネスモデルの相違や「新しいことには柔軟かつ即座に対応できる体制が望ましい」との観点から、最終的に今年7月から新会社サイネックスで事業を継承することになったという。

 ネットサイエンスは会員登録をして利用するサービスだが、ソフト購入以外の費用は無料。海外のソフトも日本語で検索できるほか、開発元のホームページへのリンク、詳細資料の入手、試用版のダウンロードなども行える。現在の会員数は1万人を超えており、ホームページ(http://netscience.nexusnet.ne.jp)への訪問者は1日に300−500、ソフト購入者のうちのリピーターの比率が約3割という成績である。

 「11月からサイトを刷新してコンテンツの充実とサービス強化を図る」と緒方社長。ソフトの紹介に人気度や評価などユーザーとの双方向性を取り入れるほか、科学機器や実験・計測器、さらには紀伊国屋と提携して専門書籍も扱っていく。また、ソフト販売だけでなく、そのソフトを使った解析サービスを引き受けることも計画中という。

 「会員数を3万人、8万人と増やし、3年後には売り上げ8−9億円、1億円程度の利益が出せるようにしたい」と述べる。